□刻まれた愛
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それからレノは社内でななしを見つけては積極的に話しかけるようになり



ななしとエレベーターが一緒になれば、用がなくても彼女が降りるまで乗っていたりと必要以上に付き纏っていた

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「ななし、最近レノさんと仲良しね。羨ましいわ」



「え、この前知り合ったばっかりで何もないよ」



開発部の同僚は、裏ましいた何度も言うが、ただ話してるだけでレノとは何も関係がないと悩むななし



「でも…気をつけなさい、あんたを恨む女沢山いるみたいよ、ほら見てみな」




同僚の視線の先にはこの前までレノと仲良くしていた派手な受付嬢達がいて



こっちを見てヒソヒソと話していたのだ



ななしは必要以上にレノと
関わらずにいようとは思うが



レノから近づいてくるため
どうしようもなかった。




そんな時だった。








「なぁ、ななしちゃん、今日の夜俺とデートしてくれませんか、と」





白昼どうどうのデートの誘い。




ななしは周りを気にしながらも
レノにそれとなく返事をする



「食事だけなら…」




「よし、俺が奢ってやる。じゃ8時に会社の下で待っててくれるか?」




そんな二人のやりとりを目撃している人達が偶然にもいてななしの名はその日のうちに
広まってしまったのだ。






そして、その日の夕方。



女子トイレの中。


ななしの目の前を
見知らぬ女性が2人行先を塞いだ





「なんですか?」





「デートなんて行かせないよ。あんたみたいなブス」



1人の女がななしを抑えて



もう1人の女が、バックから刃物を取り出す。




「あたし、レノのこと好きなの。これ以上邪魔しないで」




「やぁ!!痛い!ゃめて!!!!私レノさんとは何もないです!」





女は刃物をななしの頬にめり込ませた




「いや!!!やぁあ!!」



ななしの左右の頬に大きく刻まれた『レ』 『ノ』の文字から、赤い血が垂れる




「身体に愛しの彼の名前刻んでデートなんて行くの?素敵ね  じゃぁね」




きつい香水の匂いをさせた二人の女はななしをそのまま置き去りにし消えていく。




二人の後ろ姿を見ながら、壁に寄りかかるななしの目には涙が溢れて



その流れる涙が傷口に染みた。





そしてななしは、頬を誰にも見られないようにと隠しながら、自分の部署に戻っていった


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