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□レノの恋
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「なぁレノ、俺さ、昨日ななしちゃんに告った。」
ザックスの一言で俺の心臓は血が逆流したように熱くなった。
「…マジかよ、と」
「マジ」
……
平然を装いたくてもそんな余裕な俺にはなれない。俺は社内のリフレッシュルームで盛大なため息を吐き出し、
「レノ、マジごめん、、」
「謝る必要はないぞ、と。…俺よりお前の行動が早かっただけの話だろ」
俺を見て頭を下げるザックスに対し、内心心臓が何かに潰されてる感じだった。
「…レノ」
「んな顔するなって、んで?ななしの反応は?どうせ返事されたんだろ?」
俺が笑ってやると、ザックスは少し顔を赤くして、頷いた。
おめでたい男ってやつかよ。
「良かったな」
「いや、、恥ずかしいけどフラれた」
「は?」
ザックスの予想外の言葉に、俺は今日1番ってぐらいに、声を出した
コイツの事だから、『なーんてね!』とか『いや、実は今の冗談』なんて言い出すかと思って待っていたが、なかなか言い出さない。
「またいつもの冗談か、と。」
「いや、、、マジで。ななしちゃん俺とは友達でいたいんだってさ~」
恋のライバルが寂しそうに遠くを見て笑っている。その顔を見れば、冗談じゃない事はすぐに俺でもわかった。
俺はザックスに何て声をかけていいかを考えてみたが、こんなに寂しそうなザックスを見るのは初めてで、言葉に困る自分がいた。
「なぁ、レノ。ななしちゃんさ、好きな人いるんだって」
「…、へぇ」
それは俺にとって
聞きたくない内容だった。
ザックスよりも先にななしに恋心を抱いた俺に対し、ましてや俺の気持ちを知っていながらそんな傷つく話をするのもどうかと思っていたが
ザックスの話は俺の想像を遥かに超えた
「タークスなんだってさ。」
「、、なにが」
「ななしちゃんの好きな男」
俺は自分ではないかと期待すると同時に、ツォンさんやロッドなどの事を思い浮かべた
「誰か聞いたのか?名前」
「もちろん」
「誰?」
「うーん、、なんかいつも差し入れとかくれる優しい奴なんだって」
「…」
「この前は夜だから危ないって言いながら家まで送ってくれたって喜んでたよ」
「…へぇ」
この時、俺の心臓はこの数年で一番動いている気がした。
「ななしちゃん、好きな色赤なんだって」
俺はフラれたザックスを目の前に、口元の緩みを隠すことができなくなり、手で押さえこむ。
そんな俺を覗き込んだザックスは、腕を組みながら笑い出した
「顔に出すぎお前。つーか盛大にフラれた親友の目の前でニヤニヤまじうぜぇんだけど」
「わりぃぞ、と、」
悪いとかいいつつ
口を隠す手を外せないでいる自分がいた。
「レノ、告れよ! 絶対お前じゃん!もう100パー レノの事なんだから、今の関係が壊れるのが怖いとかじゃなくてさ、進んでみれば?」
ザックスの言う通り俺はななしとの今の程よい関係が告白する事で壊れちまうのが怖くて
2年も恋心を隠し続けていた。
そんな俺にザックスは追い討ちをかけるように話を続ける
「俺、諦めてないぜ?ななしちゃんの事。レノがそのままなら俺は狙い続けるつもりだから」
「それも困るぞ、と。」
俺とザックスは笑いながらリフレッシュルームを後にした