暗い夜
□二夜目
1ページ/1ページ
「あの…」
奈都が翔に話しかける。
地下牢を出ると、一気に日の光が襲ってきた。
特に今は8月。
普段よりも強烈な日差しが人々を襲う月だ。
「なんだ?」
先を歩く翔は振り返らずに答えた。
「あなたはどちら様で…なぜ私を…」
奈都が質問した。
「簡単に言えば、それが俺の仕事だからだ」
翔の返事はそっけない。
「仕事…?」
訳のわからない奈都の口調に翔がぷ、と吹き出した。
「あぁそうだ。お前みたいなやつを助ける、とか言う仕事な。それをやらないと、金が貰えない」
「お金…」
「あぁお金だ。それがないとみんな生活できない」
人が多くなってきた。
翔が奈都の手を掴む。
「人通りが多くなってきた。はぐれるなよ」
「はい…」
しばらく人混みを進む。
翔が引っ張ってくれたお陰で、迷わずにすんだ。
(そういえば、この人の名前聞き忘れた…ちゃんと聞いておかないと…)