飛花落桜
□冒頭
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千冬は、龍彦を思い毎日毎日泣いた。
泣き続けた。
泣いても、また次の日がやってくる。
千冬は悲しみを押し殺し、まだ小さな赤子の千春を抱きかかえ
村から離れようと、歩き続けた。
生まれ故郷を離れ、遠くの誰も知らない村へたどり着いた。
そこで、千春の龍の姿を必死に隠し千冬は
龍彦と間に生まれた自分の娘を大切に育てた。
いつの日か、千春が龍だということを忘れるくらいに。
時は過ぎ、千春は大人になり
村の鬼の男と恋に落ち、夫婦となった。
千冬も年を取り、老衰で死んだ。
千春と男鬼との間に生まれた、新しい命を見てから。