機動戦士ガンダム ジオンクロニクル0079

□過去との訣別
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俺には、まだ士官学校に入る直前。
16の頃は恋人が居た。
背丈のあるスラッとした美人。
今でも美しいと思う。
長いブロンドヘアを頭の後ろで結び、いつも元気に飛び回る活発な女性だった。
だが彼女は死んだ。
サイド3に対する経済制裁と、政治闘争によるテロの中で、彼女は18という若さで死んでいった。
あの瞬間は今でも忘れない。
彼女。
ジニーがサイド2への留学を決め、マハルの宇宙港で出航待ちをしていた時だ。
突然、待合室付近のソファが吹き飛んだ。
宇宙港を見下ろす展望デッキの強化ガラスが、近くにあった鉢植の爆弾と共に粉々に砕け散り、展望デッキにある物全てが漆黒の闇。
宇宙空間に吸い出されていく。
そんな中、恐怖で引きつった顔で、必死に俺の手にしがみついていたジニーは、飛んで来た本が顔にあたりパニックを起こしてしまった。
そして、ジニーの手は俺の手をすり抜けていった。
俺は、一番大切な恋人を救えなかったのだ。
叫びながら、泣きながら、もがきながら、宇宙空間に吸い出されていく彼女の姿が、今でも頭に焼き付いて離れない。
こんな苦しみ、こんな痛みを覚える位なら、いっそ死んでしまいたい。
そう思う事さえあった。
何度死のうと思ったろう。
何度挫けそうになったろう。
でも俺は負けなかった。
彼女と、ジニーと約束したから。
ジオンの軍人として祖国を守る。
スペースノイドの未来を切り開く一人になると約束したから。
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