中編小説

□失恋から始める恋
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episode1

#1

冬。人肌恋しい季節。

空はどんより灰色で

街はモノクロ。

吐き出す息は白くて

吐き出す唇は赤い。

そんな寂しい季節に、どうして俺を独りにするんだ。



‘‘俺と付き合って”



お前から始めたくせに



‘‘ごめん、もう終わりにしよう”



俺を独り残して終わらせた。

今だって、俺はまだ取り残されてる。







「珠樹、あいつ彼女できたって!」

「まじか!誰⁉」

「2組の・・・」

彼女できたんだ。

早。

あ、てか、俺と付き合ってた時に既にそーいう感じだったのかな。

だから

「よーしーきー」

「・・・何」

「何でそんなつまんなそーなの」

「・・・べつに」

「あ、分かった。
さっきあいつらが話してたの聞いて傷心してんだ」

「は?」

「え、だってそーだろ?
珠樹ってお前が付き合ってた」

「どーでもいい」

何でこいつはそうやって人の触れてはいけない部分に堂々と触れて来るんだ。

無神経、KY野郎。

「えー。
って何処行くの?」

「・・・どっか」

「早退?
センセーに怒られるよ」

「ガキじゃねーからそんなん脅しにもなんね」

こいつと居るとダメだって、何でかそう思う。

それは多分、何処と無く

あいつに似てるから。

「じゃーね。良樹」

「ウザい」

ウザい。ウザい。ウザい。

ヘラヘラしてるとこも、解ってるくせに突っ込んでくるとこも。

あんな奴、大嫌いだ。
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