1番線

□宴
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「ねぇなまえちゃん。今日の夕飯は?」
「今夜は寒いのできりたんぽ鍋ですよ。上官」
「ホントっ!?ねぇ、北陸とか、山形とか呼んでもいい?」
「構いませんよ。お酒用意しときますね」
「ビールだけでいいよ。多分東北辺りがお酒持ってくるから」
「分かりました」
こんな会話を始めたのはいつごろだろう。
ここにきてしばらくしてから・・・かな

秘書兼雑用係になったのは5年ほど前
会議や書類作成。仕事の合間に飲み物やお菓子を出していたが、ある日夕飯を食べそこなったとヘソを曲げた上官に、宿舎にあったありあわせのものでおじやを作ったのがきっかけだろう
すごく美味しいと言ってくれた
その一言がすごくうれしくて、休みの日や仕事終わりに宿舎で料理を1人練習した

「じゃあ、買い出しに行ってきますね」
「うん、気を付けてね」
鉛色の冬空を見上げながら、冷凍庫の雪だるまを思い出す
秋田に戻った上官が、あさイチの新幹線で東京に戻り、アイスバッグから雪だるまを取り出した
「秋田の雪!ほら、なまえちゃん!雪だよ!!」
子供のように笑う上官からもらった雪はとても冷たく、とけないうちに冷凍庫にしまった
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