story
□D.E.S.T.I.N.Y.
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「みーちゃんおいで。ご飯だよ」
今日は久々の休み。春香は、自宅の庭先で猫のみーちゃんと戯れていた。
「みーちゃんはやっぱ可愛いなぁ。ん?また体大きくなった?!肉付きがよくなってるよ!!写メ撮ろ」
家の庭にカシャ、カシャとシャッター音が鳴り響く。ふと、筋肉質な彼の姿が春香の脳内をよぎった───ピンクベストの貴公子、春日の姿だ。
「……はぁ。また会いたい…。会って、この前のお礼が言いたいな…どこに行ったら会えるんだろう。ねー、みーちゃん」
「うにゃ?」
「あーあ。バイト先に来てくれないかなー。なんなら、今目の前に現れてくれたら…なんつって」
春香はぺろっと舌を出し、寂しさを紛らわすかのように愛猫みーちゃんを優しく撫で、時に激しく揉みしだいた(因みにみーちゃんは、恍惚とした表情で、洗練された飼い主の手の動きを全身で感じ取っていた)。
「ふふ、みーちゃんかわいいなぁ………きゃっ?!」
突然、春香の視界が真っ暗になった。誰かに、後ろから目隠しをされたのだ。
「だーれだ」
重低音だがどこか優しい、川のせせらぎのような心地よい声が春香の脳内に響き渡る。
「あっ……うそ…っ……もしかしてこの声は……春日さん?」
「フフ、正解だよ(耳元で囁く)さぁ、こっち向いてごらん」
目を覆っていた手の感覚が消え、春香はゆっくりと目を開けた。
真昼の下界の明るさは、数秒前まで目隠しをされていた春香の目には少々刺激が強く、目を薄く開かないと涙が出るほどだった。
(下界…チクショウ…眩しい…)と心の中で悪態をつきながら、声のする方へ体を向けてみると、そこにはピンク色の世界が広がっていた。ピンクベストに身を包んだ、春日が立っていたのだ。
「春日さん…っ!!!」
「あっ、ちょ、春香ちゃん、こらこら〜急に抱きつくなんて、反則だぞ〜」
「そっちだって勝手に目隠ししたじゃないですか」
「そうだね、ごめんごめん。驚いた?」
「そりゃ驚きますよ。どうしてここに居るんですか?」
「散歩してたら、いい公園を見つけてね。一休みしようと思ったらそこに春香ちゃんが居てね、つい」
(※春香の家は公園の中にあります)
「そう…なんですね…///まさか、また春日さんに会えるだなんて、夢みたい。あっ、この前はありがとうございました」
「ん?」
「お陰で火傷、跡にならずにすぐ治っちゃいました///」
ひらひらと己の指を見せつける自慢げな春香。春日はその姿を見て微笑むと、春香の手を取り、指先に優しくキスをした。
「あ……春日さん……///」
「ねえ、春香ちゃん………運命って、信じる?」
目の前の貴公子が妖しく微笑む。
公園の中にある春香の家の庭に、ビュウンと風が吹き抜けた。ついに、春香に春が来たのだ。
〜to be continued〜