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□【零】全ての始まり。
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朝田詩乃は溜息を吐く。
別に幸せが逃げようと関係無い。今既に幸せでは無いから、問題ではなかった。
メンタル面のカウンセリングだから仕方ないとは割り切っていたが、それでも嫌なものは嫌だ。医療用VR機器、通称メディキュボイドを付けて潜る時はいつもこうだった。電子の海に身を預ける事が言い様の無い不安を自分へ掛けているようで、それが嫌だった。だけどそれは必要不可欠な事であるから、嫌でもやらざるを得ない。それがまた、自分の『弱さ』を認識するきっかけとなって嫌だった。
「じゃあ、朝田さん。準備はいい?」
「...はい。お願いします。」
嫌だけれども頷きメディキュボイドを頭に着け、用意されたベッドに横たわる。メディキュボイドに電源が入り、今日もまたいつも通りの世界へ潜る。
その筈だった。
「……!?何……これは………」
現実世界の声が遠のく。
朝田詩乃は緩やかに、それでいて垂直に落ちていった。
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