書物1.
□もどかしい
1ページ/2ページ
「はったりかましてんじゃねぇぞぉぉおお?!」
突然聞こえてきた大声に驚き零してしまった紅茶
「だから言ったろ、お前は俺に負けるって。」
「一体どんな手使ったんだよ秋山ぁ!」
いつの時か聞いたことのある様な短い会話を聞きながら急いで零してしまった紅茶を拭く
幸い、零れた場所は机の上だったので拭き取るだけで良かった
『まぁまぁ福永さんも秋山さんも折角いらっしゃったんですし、少し落ち着いてお茶でもしましょうよ』
「直ちゃんは優しいねぇ。
それに比べて秋山ったら性悪の度が過ぎるなー」
「ほぅ...福永、まだそんなこと言える力があったのか」
「いえ。なんでもないです」
秋山さんと福永さんは何だかんだで仲がいいんだなと思うとやっぱり少し嬉しくて口元が緩んでしまう
それを隠すように淹れた紅茶を少し飲む
『そうだ!今日クッキー焼いたんですよ
良かったら食べませんか?』
「おお!流石直ちゃん!食べる食べる!!な?秋山?」
「あ、あぁ...」
『良かった!多分もうそろそろ冷めていると思うので今持ってきますね』
食べてもらえるという喜びで私は嬉しくなる
椅子を引く音がしてふと振り返ると秋山さんもキッチンの方へ
「...手伝う。」
座っていていいんですよと言おうと顔を見たら少し目線をそらされ言われた一言
断るのも悪いと思い、ありがたくお言葉に甘える
「やっぱり秋山は直ちゃんに甘いなぁ...」
ふと零れた独り言
でも、これは間違いではない
今だってまさにそう
直ちゃんがまだ冷めていないクッキーを焼いた鉄板に触れてしまい火傷をし、それを親のように慣れた手つきで対処する秋山
こんな二人だけど付き合ってすらいない
お互いがあと一歩を踏み出せていないだけ
何かに繋がれたままの二人
その何かに繋がれたまま、お互いは少しずつ変わり成長していったのに自分の事は後回し
あぁ...もう
((「もどかしい」))
その言葉を直ちゃんが淹れた紅茶を飲んで押し込む
早 く 気 づ け ば い い の に
''トランプゲームでこんなに楽しめたことはないですよ!''''そうだねぇそれにしても直ちゃん地味に強い...''''そんなことはないですよ!あ...もうこんな時間。秋山さん、福永さんよかったら今から晩御飯作るので食べていきませんか?''''いいのかい直ちゃん?''''勿論です!''''...手伝う。''