異世界への扉

□大切な人
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『……』


柳宿だ。
今日もひとりで出かけるようだ。


『…よしっ』

「あ、明日香ー」

『美朱、鬼宿。ちょうど良かった!』

「え?」

「どうした」

『ちょっと付き合って!』


有無を言わさずふたりの腕を引っ張り宮廷を出た。


『見失ったー…』

「本当に柳宿が居るのか?」

『いるよ!絶対っ』

「ぬいほ、みふはっは?」

『あんたは…もう!美朱があれこれ食べ物に釣られるから』

「ほふぇん……」

「はぁ…。……あ、おい明日香」

『なに』

「あれ」


鬼宿の指さす先には柳宿


『あ、』


その隣には見知らぬ女性が腕をからませていた。


「……」

「……」

『……』


三人、固まってふたりを見ていると
突然、女性の方が柳宿の頬を包み、顔を近づけキスをした。


『あ』

「あぁぁあああ…」


2人はまだこちらに気づいてないようだ。


『……帰る』

「明日香っ」


見るに絶えず、その場を走り去った。



宮廷に戻ると、直ぐに部屋に駆け込み鍵を掛けてベッドに潜った。


『…………っ、うぅ…ふ、え…』


耐えていた涙が一気に溢れ、声を押し殺して泣いた。



……。



「…美朱、明日香はどうしたんだ」


夕食時、いつまでも現れない明日香を心配し、星宿が問いかけた。


「あ、えーっと……なんか、食欲がないみたいだから部屋で休むって」

「なに。どこか悪いのか?軫宿、あとで様子を見てきてくれ」

「はい」

「ああ!いいの!私が見に行くから」

「しかし、」

「大丈夫だよ、私に任せて!」

「だったらあたしが行くわよ」

「ええぇ…柳宿は今一番行っちゃ行けない気が…

「何よ。恋人なんだからとーぜんでしょ」


柳宿のその言葉に、カチャンと食器を置いた鬼宿に視線を向ける。


「お前、よくそんなこと言えるな」

「…なによ」

「明日香傷つけたくせに何が恋人だよ」

「傷つけた……?」

「鬼宿…」

「今日街でイチャついてた女は誰だよ」

「……え」

「見てたんだよ。明日香も」

「あ、あれは……!」

「あんないい加減な奴だとは思わなかったぜ」

「あんたに関係ないでしょ!」

「……そーかよ」

「っ……」


場の空気に耐えかね、柳宿は席をたち部屋を出ていった。


……。


「はぁ……あの子、見てたのね」


柳宿は軽く唇に触れると、昼間の事を思い出した。


「……ちゃんと言わなきゃね」


明日香の部屋の前に行き、ノックした。





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