異世界への扉

□永遠に
2ページ/2ページ



「あ、柳宿」

「…なに、井宿」

「明日香が今朝から探してるのだ。顔を合わせてないのだ?」

「あぁ、そうね」

「心配していたのだ」

「わかったわ。ありがとう」


翌日から、明日香を避け続けた。
さすがに食事では会うが、話す間もなく部屋を出る。

広い宮廷だ。
いくらでも逃げ道はある。

そう思いながら逃げ続け、もう明日には明日香が帰ってしまう。

最後の夕食後、鬼宿が声をかけてきた。


「柳宿」

「なに」

「お前、明日香のこと避けてんのか?」

「やーね。別に避けてないわよ。たまたまよ」

「そうか。じゃ、明日香から伝言だ」

「明日香から?」

「今から部屋に来てってよ」

「え?」

「じゃーな」

「……」


別れの挨拶?
なんにせよ、行く気にはなれなかった。







みんなが寝静まった時間、
気がつくと足は明日香の部屋に向いていた。

もう寝てしまっただろうか……。
何時間も待たせた。怒ってるだろうか。

ノックしかけた手を下ろし、部屋に戻ろうとした時、


『柳宿』

「!…」

『入って』


中から声がして、ゆっくりと扉を開けると、いつもの笑顔の明日香が居た。


「…あんた、まだ起きてたの」

『柳宿待ってたんだよ?』

「……ごめん」

『こっち来て』


手を引かれて、部屋に入る。


「…怒ってると思って、避けてたこと」

『やっぱり避けてたんだ』

「…ごめん。あんたは、明日にはもう居ないでしょ。だから……」

『柳宿……私、帰らないよ?』

「え?」

『ここに残る』

「…でも、あんたそれって、育ってきた世界を捨てるのよ。家族も友人も」

『悩んだよ……でも、たくさんのものを手放しても…私は、あなたのそばにいたい』

「……」

『好きなの。柳宿が』

「え……」

『だからね、柳宿さえよければ…こっちの世界で、一緒に暮らそう』

「……明日香」


明日香を抱き寄せると、彼女も背中に手を回してくれた。


「……絶対!幸せに、するから…後悔させない。一緒にいてほしい」

『…ありがとう、柳宿』




END

2021-05-29
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ