名もなき七星

□第六章
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「朱雀の巫女。お前はここに長くいすぎた。よって最初にここに来たときのように道が開いただけでは帰れん」

「道が開いた?」

「元の世界とこちらの世界をつなぐ道だ。はじめの頃は、お前の強い意志で戻れたはずじゃ。

 こちらの世界と元の世界、それをつなぐものがある」

「ふたつの世界をつなぐもの…?」

「こっちにもあるものと向こうにもあるものだ」

「…唯ちゃんと私の、制服」

「そして、深く繋がり合う強い意志に感情じゃ」

「唯ちゃん…繋がってます。強く、深く」

「本来、朱雀の巫女を元の世界に返すことなど、朱雀七星が揃っていれば容易いことじゃ。

 星宿、鬼宿、柳宿の三人じゃ…しかも、柳宿以外は怪我人じゃ」

「大丈夫、やれるさ」

「安心しろ。必ず返してやる」

「安心なさいよ美朱。最近あたし、いい子でしょ?」

「みんな。ありがとう」

「その代わり、元気になったら戻ってこいよ」

「…うん。明日香、一緒に帰ろう」

『うん』

「残念じゃが、お前は帰れん」

「え…明日香が帰れないって、どういうことですか」

「言ったじゃろ。帰るには、こちらとあちらをつなぐ媒体が必要。それが朱雀の巫女の制服であれば…」

『制服が違う私は、帰れない』

「そんな!」

「なんとかならねーのかよ!」

「無理じゃ」

「そんな、それじゃぁ」

『いいよ』

「明日香」

『大丈夫だよ。戻ってくるんでしょ?』

「…」

『待ってるから。今は自分が戻ることだけ考えな』

「…ごめんね」



「朱雀の巫女を囲むようにして座るのだ。

 気を集中させろ。美朱も元の世界を思い描くのじゃ」


美朱が帰れるように気を集中させて念を送る。

しばらくすると、美朱の姿はなかった。


「帰ったのか」

「ご苦労じゃった」


その後、太一君によって元の場所に返された。


「すまない明日香。お前も返せると思ったのだが」

『気にしないで。帰っても、意味がないから』

「意味がないって?」

『…さ、宮廷に帰ろう。美朱もすぐ帰ってきてくれるよきっと』



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