異世界への扉

□大切な人
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「ねぇ、明日香!鬼宿と市街に行くんだけど、明日香も行かない?珍しくお饅頭奢ってくれるってー」

『ホント?行くいくー!』

「ったく。お前ら現金だな」

「鬼宿が言い出したんだからね!はやく行こう!」

『あ!待って、柳宿も』

「柳宿ならいなかったぞ」

『え。そうなの』

「ほら行くぞ」

『うん』


柳宿、今日もひとりでどこか行ったんだ。


「最近、柳宿ひとりでどこか行っちゃうね」

『ん……やっぱり美朱も気づいてた?』

「うん。明日香といないからどうしたのかなって」

「そういや、ここ数日あいつ、やけに嬉しそうに街に出ていくよな」

『嬉しそうに?』

「あぁ。今日も飯食ったら直ぐに出ていったぞ」

『……』

浮気…だったりな!ふぎゃっ」


ニヤつき顔でそんなことを言う鬼宿を美朱が殴り飛ばした。


『う、浮気だなんて…そんな』

「そうだよ!柳宿に限ってそんな事しないよ!」

「だよな。オカマだしな」

「あんたは黙っとれぇ!」


ギャーギャー騒いでるふたりを眺めながら、《浮気》という二文字が頭をグルグルと回る。


「あら、三人でどこいってきたの?」


宮廷に戻ると、もう柳宿も帰ってきていた。


「市街に、鬼宿がお饅頭ご馳走してくれたの」

「へぇ、たまちゃんが。明日は雪かしら」

「うるせーな」

『……』

「ねぇ、明日香」

『え』

「ちょっと手見せて」

『え……手?』


ニコニコと近寄ってきて、左手を取るとじーっと見つめた。


「……」

『……柳宿?』

「ふふ…やっぱり綺麗な手ね」


重ねた柳宿の手の方が綺麗だと思った。


『…ねぇ、柳宿』

「ん?」

『最近、ひとりで市街に行ってるみたいだけど…なにしてるの?』

「え……」


あからさまにギクリという反応をし、目を泳がせた。


『……どうしたの?』

「えっと…ちょっと、友人に会いに」

『友人?』

「そ、昔のね」


明らかな苦笑いで返事をしたが、それ以上追求はしなかった。


『…そう』

「ほら、もう夕食の時間よ。準備しなさい」

『……』




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