異世界への扉

□『おとぎばなし』のように
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「「「……」」」


その場にいるみんなが少し疑問に思った。
ひとり、“小さいまま”食事している彼の姿を


「なんやアレ。アレはなんか狙っとるんか?」

「さぁ…」

「ツッコミ待ちか?「お前なんでそのままやねーん」って突っ込んだ方がええか?」

「井宿に限ってそんなことあるはずねーだろ」


コソコソと話す翼宿と鬼宿は置いといて、
みんなの視線の先には3頭身のままの井宿がいた。
もちろん、今まで3頭身になることは多々あった彼だが
そのまま食事に来たことは無い。

これは、口に出していいものだろうか…。


『ねぇ、井宿…』


明日香の声に全員がバッと明日香を見やる。


(言うのか?!聞くのか!?)

(もし言いづらい事情があったらどないするつもりや!)


だけど、そんな視線はお構いなく明日香は続けた。


『なんで体、そのままなの?』


ついに言ってしまった一言に、再び全員の視線は井宿にあった。


「だ!やはり気になるのだ?」

『うん』

「みな、何も言わないから、特に気にしてないと思ったのだ」

「いや!めちゃめちゃ気になんねん!」

「どうしたのだ?今までその姿で食事をしに来たことがなかろう。」

「何か事情でもあるんですか?」


明日香が先手を切ったのを合図に
みんなから心配やら質問の声が浴びせられた井宿は「だぁ〜」と項垂れてしまった。


『どうしたの?』

「オイラとしたことが…戻れなくなってしまったのだ」

「「『……ええぇぇぇえええ!!?』」」

「ち、井宿が?」

「珍しい事も、あるんだな」

『猿も木から落ちる、だね』

「だ〜…参ったのだ。昨日の夜から何故か元に戻れなくなってしまったのだ」

『太一君の所に行ってみたら?』

「術を使うには気力体力を使う。この姿では少々荷が重いのだ」

「それじゃぁ、どうするんですか?」

「考えてるとこなのだ」

『軫宿の薬とか』

「これは井宿の術なのだから、俺の力ではどうにも出来ないだろう」

「だぁ〜」


結局、解決策は見つからないまま食事を終えた。





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