異世界への扉

□不器用な想い
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『で、できたぁ〜!』


バレンタインチョコ!
苦節13時間。不器用にも程がある。
使用していたキッチンは片付けるのも面倒な程に散らかってしまい、手にはいくつもの絆創膏。


『あちゃ……まぁ、ラッピングも上手く出来たし、あとは明日…』




……。


『ふぁ……眠』


片付けも含め昨日寝たのは深夜2時。
欠伸を数回連発しながら登校していると、前方に今日の目標を見つけた。


『柳宿っ─』


慌てて物陰に隠れてしまう。


『あぁ…いつもなら、普通におはようって言えるんだけどなぁ…』

「……なにしてんの?」

『わぁ!?……ゆ、唯…美朱』

「おはよー」

『お、おはよう』

「あーぁ、手そんなに怪我しちゃって」

『えへへ』

「作れた?」

『うん!唯のレシピ上手くいったよ!』

「その手の怪我見て、上手くいったとは思えないんだけど」

『ちゃんと綺麗にできたよぉ…』

「なにしてんの」

『わぁ!?』


本日、二度目の驚き。


「柳宿、おはよー」

「おはよ。早くしないと遅れるわよ」

『う、うん』


先を行く柳宿の後ろを3人でついて行く。


『はぁ…』


学校に着くと、早速囲まれている人物がいた。


「星宿様ぁ!チョコ受け取って!」
「私のも、受け取ってください!」

「ありがとう」

『へぇ…さすが星宿』


普段から人気の星宿は朝からチョコラッシュ。


「けっ、付き合えもせんのによーやるわ」

『翼宿、ヤキモチ?』

「な、なんで俺が妬かなあかんねん!」


「鬼宿、はいこれ!」

「お、おぉ。サンキュ」

「こらぁ!そこ!朝から廊下でイチャついてんやないでぇ!?」

「はぁ…ガサツな翼宿になんて…誰があげるのかしらねぇ」

「お前ら失礼やぞ!そーゆうお前かて、オカマやないか!」

「ガサツよりマシよ〜」

「どっちもどっちなのだ」

『あ、井宿。軫宿と張宿もおはよ』

「おはようございます」

『へぇ…みんな貰ったんだ』

「だ。さっき校門前で貰ったのだ」


井宿、1つ。


「俺は、下駄箱の中に入ってた」


軫宿、3つ


「僕は、親しくしてもらってる先輩方に」


張宿、大きいの1つ


『良かったね!これで貰ってないのは翼宿と柳宿だけかぁ』

「そういう明日香は、誰にも上げないのか」


いつの間にか現れた星宿。
数えきれない程のチョコ。


『え…私はぁ……』


チラリと美朱と鬼宿の方を見てみると
同じ顔してムカつくくらいのニヤケ顔を向けていた。

再び6人に目を向けると、ジーッと見つめられていた。


『みんな……怖いよ?』

「言いなさいよー。誰かに渡す当てでもあるの?」

『わ、私は……』

『い……いないよ!』


詰め寄られ、若干怖くなりとっさについた嘘。


「なんや。おもんない奴やなぁ」

「少し期待したのだが」

「星宿様はもう十分なのでは…」


至極つまらなそうにそれぞれ席に着いた。


『……あ』





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