異世界への扉

□サヨナラの時
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『あ。芳准様、綺麗なお花が咲いてますよ』

「あぁ」


ふたりで旅をして3年。
初めは彼女を拒絶した。
それでもオイラの後を着いてきた彼女。


「明日香、先に進むのだ」

『はい』


初めは笑うことはもちろん、話すことも少なかった彼女。
今は人一倍おしゃべりで、よく笑う。


「……」


何かを感じ、足を止めたオイラを不思議そうに見上げる明日香。


『…芳准様?どうかしたんですか?』

「…明日香、今日はひとりで宿を探してくれ」


そう言いながら、お金が入った巾着を手渡す。


『は、はい…』

「すぐ戻るのだ」


俯く彼女の頭をポンポンと撫でると背を向け歩き出す。


『……』



……。


芳准様に宿を探すように言われ村の入口近くの宿に適当に入った。


『…すぐって、いつだろう』


最近、芳准様はひとりでどこかへ向かう。
大抵翌朝には戻ってくるが、この日は3日経っても戻ってこなかった。


『おかしい!』


翌朝、起きて直ぐに宿をでて芳准様を探しに村を出て
彼と別れた所まで戻ってきた。


『どっち、行ったんだっけ…』

「お嬢ちゃん」

『…え』

「誰か探してるの?」


人の良さそうな男の人。


『え、えっと…』

「俺、この辺には詳しいんだ。誰か探してるなら手伝うよ」

『あ、あの…狐顔の僧侶なんですけど』

「狐顔の僧侶?……あぁ、数日前にここを通るの見たな」

『本当ですか?!』

「多分こっちだ。案内してやるよ」

『お願いします!』


男の人について行き、しばらく歩くがどんどん森の奥に入り込んでいく。


『あ、あの…いったいどこに』

「…この辺、かな」


振り返った男は先程の優しい笑顔ではなく、悪い顔をしていた。


『な、なに…』


思わずたじろぐと、草陰から数人の男が現れ、あっという間に囲まれてしまった。


『あ、あの…あなたたちは』

「人攫い。お前を売り飛ばすのさ」

「ねーちゃん、顔はいいから結構な額になるだろーよ」

『……』


ジリジリと詰め寄ってくる男たち、囲まれている為、逃げ道が見つからない。
半ば諦めかけた時、


「伏せるのだ!」

『!』


聞き覚えのある声と口調に思わずその場に伏せると、目の前の男が吹き飛んだ。

ゆっくりと体を起こすと、目の前には探していた人物。


『芳准様…!』

「すまなかったのだ。明日香」

「いででででで…!」


芳准様に手を引かれ立ち上がった時、後ろから男たちの悲痛な声が聞こえ振り返る。
そこには男の人と女の人が男たちを締め上げていた。


「なによ、大したことないわねー」

「チッ…つまんねーな」


女の人…だよね……?


「井宿!大丈夫だった?」

「大丈夫なのだ!助かったのだ」

『ちちり…?』

「明日香、話があるのだ」


真剣な口調になり、とりあえずどこか休める場所に行き
事の経緯を説明された。




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