異世界への扉

□永遠に
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「明日香」

『…あ、ぬ、柳宿…どうしたの?』

「あんたこそ、どうしたの?街にでるの?」

『う…ん。ちょっとね』

「なら付き合うわ」

『いいよ!大丈夫!』

「バカね。ひとりで行ったら危ないでしょ」

『じ、じゃぁ、翼宿とか井宿に頼むよ!』

「なんでよ。あたしじゃ不満なわけー?」

『そうじゃ、なくて……えっと、、』

「ええい!日が暮れる!行くわよ!」

『え、ちょ……柳宿ぉ…』


ふたり、肩を並べて商店を見回る。


「なにか欲しいものでもあるの?」

『んー、ちょっとね』


先程から、小物店を見回っている明日香。


『あ……』

「何かあった?」

『あ、ううん!ね、柳宿。ちょっとほかの店回っててよ』

「はー?なんでよ」

『いーからっ…あとでね!』

「ちょっと!」



「なんなの……。あと数日だから、少しでも長く一緒にいたいのに」

無事に朱雀は召喚されて、あと数日で彼女は元の自分の世界に帰る。

結局、思いは告げられないまま……


「今更伝えたって…あの子が困るだけよね」

『あ、いたいた。柳宿ー』

「……あら、買い物は済んだの?」

『うん!ごめんね』

「早く帰りましょ」


宮廷に帰る頃にはもう暗く、すぐに夕食を食べ
それぞれの時間となった。

特にしたいことも無く、廊下に出て手すり越しに空を眺める。


「はぁ」


一日が早く感じる……。


『柳宿?』

「…明日香」

『何してるの?冷えちゃうよ』

「することがないから星を眺めてるの。あんたはなにしてんの」

『することがないから星を眺めに来たの』

「……何よそれ」


いたずらっぽく笑うその顔も、もう見れなくなる。
冗談も、言い合えなくなる。
もう、その姿かたちを、直接見ることも出来なくなる。


「……明日香」

『なに?』

「あんた、寂しくないの?」

『え?』

「あと数日で帰るんでしょ」

『……』

「寂しく…ない?」


少し、期待した。
『寂しい』と言ってくれるのを。
自分と離れるのが寂しい、と言ってくれるのを。


『……寂しくないよ』

「っ…」

『私、』

「ごめん。もう休むわ。おやすみ」

『あ、柳宿!』


呼び止めるのも聞かずに、部屋に戻った。

寂しいのは、自分だけだったようだ。
それならいい。
あの子が寂しくないのなら、あたしが耐えればいいだけだ。




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