名もなき七星

□第三章
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『…何してるの?』

「…しーっ」


お風呂上がり、部屋に戻るために廊下を歩いてると
ある部屋の前で鬼宿と柳宿が壁に耳をすましていた。


『…ここ、星宿の部屋』


ぼそぼそと聞こえる中からの声。


「そなたのこと、もっと良くしりたいのだ」

「星宿…」


その時、壁に切れ目が入り崩れると中には星宿と美朱。


「鬼宿!柳宿!明日香!」

「はぁ…3人には特別に私の部屋の出入りを許可しているが、こういう時は気をきかせるのが道理だろ」

『いや、私は…』

「すみません」

「あ、あの、星宿。私そろそろ部屋に…」

「美朱。さっき言ったことは本当だ。朱雀を召喚しすべての事がすんだら、私はお前を妃として迎え入れる。」

「そ、そんな!勝手な」

「無論、命令ではない。今日はそこで休むといい」


みんなもそれぞれ部屋に戻ろうとしたとき、柳宿に呼び止められた。


「明日香。ちょっといいかしら」

『え、なに?』

「いいから」

『…』


ついて行くと、通されたのは柳宿の部屋。


『…なに?柳宿』

「…」


柳宿は何も言わずに鏡台の前に座り髪をといた。
何も言わない空気に落ち着かないで居ると、不意に口を開いた。


「…悪かったわ」

『え?』

「酷いこと言ったと思ってる」

『…ぁ』


その時、パッと数時間前に言われたことを思い出した。


『別に、本当のことだし。忘れてたから』

「…そう」

『…』


柳宿って、結構素直なのかも…。


『…髪、といてあげようか』

「…お願いしようかしら」


櫛を受け取ると、髪に通した。


『…柳宿って、綺麗だね』

「なによいきなり」

『いや、初めて会った時から思ってたよ?綺麗な人だなぁって』

「当たり前でしょ。まぁ、星宿様には敵わないけど」

『そう?私かしたら2人とも同じくらい綺麗だよ』

「いいえ!あのお方の上に立てる者などいないわ!」

『そ、そっか』



『…柳宿といると、お姉ちゃん思い出すな』

「お姉ちゃん?…へぇ、いるの?」

『…うん、いた。
 3つ上でね、凄く仲が良かったんだ。勉強のことも、恋のことも、何でも話して……』

「…明日香?どうかした?」


手が止まったのを不審に思ったのか呼びかけてきた。


『ん…ううん。なんでもない』

「…寂しいの?」

『え』

「あんたも、異世界から来たんだもんね。知らない場所で、寂しいんでしょ」

『…少しね』

「ふっ…可哀想だから、あたしがあんたのお姉さんになってあげる」

『柳宿…』

「なんでも話しなさい」

『…ありがとう』




 

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