long「フェンスと嘘」

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ズブッ…ヌプッ……グチャ、グチャ…

卑猥な音がトイレ内に木霊する。
何度も繋げては奥を突き、欲望を解放させる。
誰かを思いながらに流したり受けたりする愛はとても複雑だ。

「はぁ、ぁっ…」
「く、は……っ」

便器の中に放り込んだ精液。
流せば忘れ去られるのは知ってる。
だから流し込んだ、忘れようとして。


『好き、かもしれない』

彼だって恋人は居る。
なのに告白をして来た。

『ごめん、いきなり。…瞬のことも好きだよ。
 でもさ、なんか聖陽と居るとドキドキするというか…』

赤らめた顔は初めてだった。
見たこともない顔する彼だったが、フってしまった。
どうしても今の恋人と比べてしまう。

俺の悪い癖。



「拓哉さ、瞬と付き合ってんのに聖陽に告白したらしいよ」
「うわ。それ瞬どう思ってんの?」

忽ち噂は広まった。
恋人はその日冷たかった。
でも突然握られた手には温もりがある。
それだけで嬉しかったけど、どうしてだろうか。

「瞬、ごめん」
「別に。怒ってないし。」

一階トイレ、一番目個室にて。
男の臭いがする此処でキスを受けていた。

「誰にも言ってなかったけど今言う。
 俺、昨日佳祐に告られた。」


泣きそうだった。
キスで潤んだ唇にまた口付けをされる。
まるで消毒をせがむように。

「拓哉、こっちこそごめん」
「ん、大丈夫…だよ」

モヤモヤする。
勘違いじゃない、確信じゃない。
もう何も分からない。

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