白の世界
□第7話
1ページ/6ページ
黒髪に至って普通な服装。額には包帯を巻き、人通りの少ない道を歩く青年。
一見美青年で、人当たりのよさそうなこの青年はA級賞金首でもある「幻影旅団」の、「蜘蛛」の団長、クロロ・ルシルフルであった。
彼は今日、今回のお目当て品「天使の雫」の下見も兼ねて、周辺を歩いていた。
「そろそろホテルに戻るか。」
そう呟いた時だった、一人の少年のような少女のような、男性のような女性のような者とすれ違った。いいことでもあったのか、陽気に鼻歌を歌っている。
しかし、彼が気になったのは鼻歌の内容なんかでも、その袋の中身でもなかった。
匂い
この匂いは確かにあいつの……。
咄嗟に陰に隠れ、絶をすると相手も「何か」に気づいたのだろう。彼がいたであろう場所をじっと見つめている。
「少し、調べてみるか。」
また一つ呟き、仲間であり旅団の情報担当でもあるシャルナークに連絡をした。
「もしもし、団長?」
「ああ、シャルか。天使の雫とは別で調べてもらいたいものが出来た。」
「別で!?」
「少し気になってな。」
「俺、そのうち過労死すると思う……。
金は払って貰うからね?」
「ああ。別で払う。」
「わっかたよ。」
「頼んだ。」
電話を切り、ホテルに向かう彼の顔は、心なしか微笑んでいるように見えた。
「必ず、見つける。」
己に言い聞かせるようなその言葉をその場に残し、クロロはホテルへと戻った。