白の世界
□第6話
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それから一か月が経ち、ケイは順調に念の応用技を身に着けていた。
今は休憩の合間にアリスから貰っているお小遣いで大量にお菓子を買った帰りである。
「ふんふふーん♪ふふーん♪
帰ったらどれから食べますかねー。」
いつになく上機嫌な様子で、今にもスキップなんかしそうな様子で大量のお菓子を持ち、歩いていると、男性とすれ違った。
匂い。
甘く、懐かしい匂いがした。
なぜその匂いを懐かしいと感じたかはこの時のケイには知る由もなかった。
すれ違いざまに見えたその男性は、黒髪で額には包帯?布?を巻いているようだった。
振り返ってみたがもういない。
ガサリ
持っていた袋の音で思考が戻ってきた。そして、その袋を見るとお菓子の誘惑に引き戻された。
何もなかったかのようにケイは再び鼻歌でも歌いながら帰路に着いたのだった。
しかし、その違和感のようななんだかもやもやするものはすれ違った男性も感じたようだ。
知っている匂い。
かつて嗅いだことがある。反射的に陰に隠れ、気配を絶って少年のような少女のような、男性のような女性のようなその『人間』を見ていたが、相手が帰るのを見ると何処かへ電話を掛けた。
「ああ、シャルか。天使の雫とは別で調べてもらいたいものが出来た。」
「−−−−!?」
「少し気になってな。」
「−−−……。
−−−−−−−?」
「ああ。別で払う。」
「−−−−−−−。」
「頼んだ。」
シャルと言う者と会話を終えると、ホテルに向かった。
その笑みを闇に消しながら。