青い鳥

□1、はじまり
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パルス国のダルバド内海沿岸に広がるダイラム地方。その地方にある森の中にある女がいた。
女は夜となって真っ暗闇の中であるというのにすいすいと1つも物にぶつからずに歩いていく。

「はぁ……やっと着いたわ!いっつも暗いから大変なのよねー。お腹すいたなー」

その女が足を止めた場所―――それは、湖の畔にあり、簡素だがキレイな小屋。
ダイラム地方の元領主、ナルサスの家である。

「ナルサス、エラムー。いるー?」

女は慣れた様子で階段をかけあがるとノックをして扉を開けた。
その中には――――絵を描く綺麗という表現が相応しいような顔立ちの男……ナルサスがいた。

「ナルサス……また絵を描いてるの?まったくもう、絵なんて呼べる代物じゃないと思うのに……!」

女はため息を吐くと、ここにいるはずのナルサスの侍童、エラムの姿を探した。しかし、その
姿は見えない。

「あれ……エラムは?」
「……エラムなら森に人間が来たから追い払いに行っている」
「へぇ……じゃあご飯はエラムが帰って来てから……」

そこまでいうと女は唐突に声を止めた。
そして、扉を見ながら耳をピクリと動かす。―――何かが、こちらにやってくる。
そう感じたのだった。
しかし、女はあっさりと警戒心を緩めた。
こちらにやってくる何かに、懐かしい雰囲気といつもいるエラムの雰囲気が感じ取れたからである。
その懐かしい雰囲気とは、もしかして……

「ダリューン?」

懐かしい友……いや、それ以上の気持ちを持っている女は、その名前に胸を動かしたのだった。
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