* 本文(R18) *

□猫と瓜
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茹だるように暑い夏の午後。

けたたましく鳴く蝉の声を聞きながら、小十郎は一人縁側で横になっていた。

こうやって自分の屋敷に帰ったのは、いつ以来だろう。確か田植えの前に荷物を取りに来て、それきりだったような。

姉の喜多と使うようにと拝領した屋敷ではあるが、与えられて数年。城での生活が長過ぎる姉弟がここを利用するのは、一年に数回ほどである。

特に、伊達家中を執り仕切る小十郎には、休みと言ったものが殆どない。
ごく稀に風邪を引いても一日休めば治ってしまうし、自ら望んで休暇を取る時は、大抵畑か所用で動き回っている。のんびりと過ごす事など、ないに等しい。

忙しい身であるのも確かだが、これは性分なのだろう。何かしらしていないと落ち着かない、"貧乏性"なのだと自分でも自覚している。

しかしある日、そんな小十郎の働きぶりに異論を唱えた者がある。誰あろう、主人である政宗だ。

昨日、何時ものように仕事を始めようとしたら突然政宗がやって来て、一週間ほどゆっくり休めと、無理やり休暇を取らされた。
下の者に示しが付かないと食い下がったが、主は言い出したことを簡単に引っ込める人間ではない。

こうして小十郎は、半ば追い出されるような形で屋敷に帰されたのだ。


「政宗様も何を考えていらっしゃるやら……クソ、落ち着かねぇ……」

ゴロンと体の向きを変えながら、恨み言を呟いてみる。

城から少し離れた自邸は、余りにも静かで退屈だ。
滅多に帰らないから畑もないし、使用人と言っても通いの老夫婦が居るだけで、夕刻になればただ一人。

持ってきた書物も読み終えてしまった今、暇潰しの手段も思い浮かばない。
そんな訳で仕方なく横になってみたのだが、慣れないせいか妙に据わりが悪かった。

「のんびりも悪くはねぇんだがな」

城に上がって早十年。忙しいのに馴れ過ぎて、休みを苦痛に感じてしまうとは。
つまらなそうに溜め息を吐き、小十郎は自分の居る場所に涼しげな影を落とす、けやきの木を見上げた。

所狭しと繁らせる深緑の葉。隙間から覗く真夏の抜けるような青空。
風が吹くとザアザアと優しい音が降り注ぎ、少しだけ暑さが紛れる。

心地好さに目を閉じると、次第に眠気が訪れた。
起きていても、どうせやる事はないし、時間を潰すには調度良いーーーー

小十郎は大きな欠伸をして、押し寄せる眠気に身を委ねた。


とろとろと惰眠を貪る最中、とても懐かしい夢を見た。
子供の頃、実家で飼っていた猫の夢だ。

最初は野良だったのだが、いつの間にかちゃっかり住み着いた黒い猫。毛並みが綺麗で、とても人懐こい奴だった。
朝になるとグルグル喉を鳴らしながら、決まって小十郎の口に小さな鼻を押し付け…………。

「っ!!」

「Hey!起こしちまったか?」

「………どうして、此処に」

夢にしては現実的な感触に飛び起きると、身の上で四つん這いになり、軽い口付けを落とす政宗と目が合った。

「お前が隙だらけだなんて珍しいじゃねぇか」

「わざと気配を消して近づかれたのでしょう。供も付けず、また城を抜け出しましたね」

「そうカリカリすんな。お前が退屈してると思って、顔を見に来ただけだ」

「その退屈の原因はどなたが……」

「 怒ると余計に暑くなるぜ。ほら、土産だ」

ニヤリと笑った政宗は、小十郎の顔の真ん前に大きな瓜を差し出す。

「良く冷えてるぜ。一緒に食おう」

「……………」

「主の差し入れを受け取れねぇってのか?」

「分かりましたよ」

小十郎はむすっとした顔で瓜を受け取ると、額に手を当てながら立ち上がり、そのまま厨へと歩いて行った。



少しして小十郎が放射状に切った瓜を盆に乗せて戻ってくると、縁側に腰掛け足をぶらぶらさせていた政宗が、不思議そうな顔をした。

「お前が切ったのか?誰かにやらせりゃ良いのに」

「使用人は帰しました。殿が城を抜け出してこんな所に居ると知られる訳にはいきませぬゆえ」

「いちいち突っ掛かんなよ。夕餉までには戻るって」

「必ずですよ」

「l got it!良いから早く食おうぜ」

余程喉が乾いていたのか、政宗は盆が下ろされるより早く瓜を掴み、かじりつく。
瑞々しい果肉は歯を立てられる度に果汁を飛ばし、政宗の指を濡らした。

「うん、こりゃなかなか美味めぇ」

あっという間に三切れの瓜を食べ終え、政宗は手の甲で口元を拭った。
それから散々汁にまみれた指を、ぺろりと舐める。

「政宗様!」

「Ah?」

「そのように粗野な真似をしてはなりませぬ。手拭いなら……」

無作法な主を諌めようと口を開くが、途中で言葉が立ち消える。

長くしなやかな指を、蛇のように這う赤い舌。
半分ほど開かれた唇は、瓜の果汁でしっとりと濡れていた。

「あの……手拭いを」

小十郎はハッとして目線を逸らしたが、政宗はそれを見逃さず、意味深に口角を上げる。
悪戯な笑顔に漂う、独特の色香。ぞくりとするほど情欲をそそる。

「どうした?あぁ………瓜より俺が食いたいって面してやがる」

「いえ……まさか」

「You’re a liar!隠すなよ」

するりと伸びた腕が小十郎の首に巻き付き、形の良い唇がそっと押し付けられる。
密かに漏れる息は瓜の甘い香りを纏い、小十郎の鼻先をくすぐった。

「良いじゃねぇか。ここには二人きり……だろ?」

ちゅっと、浅く唇を啄みながら、政宗の瞳に段々と熱が灯る。

人目がないとは言え、昼間から不埒な真似をする訳には………。
心中で倫理を振りかざしてみるが、チラつく餌は余りにも魅力的だ。本心を言うなら、もう引き返す自信はない。

目の前に迫る白い喉に齧りつき、滑らかな肌を存分に味わいたい。
そんな衝動が、体を駆け巡る。

今が休暇で職務を負っていないと言う身軽さや、人気のない自邸で二人きりであると言う解放感に、小十郎はほんの少し、己の箍を外していたのかもしれない。

「政宗様………」

未発達だが、しなやかな背を抱き、腕の中に閉じ込める。

重なり合う胸から聞こえる鼓動は、どちらのものか。考える間もなく唇を奪い、舌で中をまさぐった。

「んぅ………ぁふっ、………んっ」

絡んでくる舌を吸い上げたり、反対に押し返したり。口腔に溜まる唾液を混ぜながら、喰らい合うような口付けを交わすと、呼吸の合間に甘えた声が溢れた。

隻眼をうっとりと細め、政宗は小十郎の手を自らの掛け襟へと導く。促されるままそこを割り開くと、陶器を思わせる肌理の細かい胸元や、淡く色付く突起が露になった。


ーーー堪らねぇ。

体が一気に熱くなる。
見た目の美しさに誘われる以上に、政宗の身体に歯を立て、舌を這わせ、ひたすら貪った記憶が呼び覚まされた。

この肌に散らす朱の痕が、どんなに艶やかか。小さく可愛らしい突起を指と口で犯してやると、主がどれほど甲高い声で愉悦に浸るか。
思い出すだけで、己の雄が昂って行くのが分かった。

「……おい、もう一つ土産だ」

扇情的な瞳を向けながら、政宗は袖から小さな瓶を取り出す。
青いぎやまんの中で揺れる、ねっとりとした液体が何なのかなど、確かめるまでもない。

政宗は、最初からそのつもりで此所に来たのだ。
小十郎は、ゴクリと唾を飲む。

「さぁ小十郎……早く……」

爛々と燃え盛る火のように熱く、獰猛なまでの欲望を湛える瞳。
それに囚われる自分もまた、同じような目をしているのだろう。


「ここではお声が響きますゆえ、中に参りましょうか」

低い声で囁きながら、飢えた目を歪ませた小十郎は、政宗を抱き上げ障子を閉めた。






「あっ……ぁ、んっ……」

光も殆ど届かぬ奥座敷。薄暗くひんやりとした部屋の中、小十郎は政宗の胸に在る突起を口に含み、もう片方を指で摘まむ。
肌よりやや濃い程度の乳首は、すぐにコリリと凝り、弄られるまま形を変えた。

ともすれば、容易に逃げていく小さなそれを逃がさぬよう執拗に追い掛け、上下の唇で扱きながら、先端部を舌先でくすぐる。
同時に反対側を少し強目に押し潰してやると、政宗はビクビクと背筋を震わせ、喉を反らした。

「あっ……、あんま舐めんなっ……っあ、汗掻い……て」

「ならば綺麗にして差し上げますよ」

「ひぁっ……あっ、あぁ」

口腔内にある突起に歯を立て、それから乳輪ごと吸い上げる。数秒して一気に解放すると言う行為を繰り返している内に、政宗の乳首はほんのり赤みを帯びてきた。

胸への愛撫だけで乱れきる主は、もう焦れったくて仕方がないのだろう。両脚で小十郎の臀部を抱え込み、先自分の腰を押し付けて、先の行為をせがむ。

「こじゅろっ……も、ぁ…さっさと」

「確かにこれでは、苦しゅうございますね」

袴の脇あきから手を差し込み、窮屈そうに自己を主張する部位を、形に沿って撫でてやる。

小十郎が軽く触れただけで、政宗の自身はビクンっと跳ね、一段と硬さを増した。
余りの感度の良さに、小十郎は思わずほくそ笑み、緩やかに沿革を摩った。

「んっ!んっ、小十、郎………ぁあっ!」

何も知らない真っ晒な身体に快楽を教え、己を刻みこんだ結果。愛しい主はいつしかこんなにも素直に小十郎を求め、些細な刺激にも媚態を露にするようになった。

「……こじゅ、ろっ……もっと…」

布越しでは足りないと、政宗は自ら袴の紐を解く。
前後の紐が緩んで来ると、小十郎は濃紺の袴を引き抜き、股の内側や臍の下に掠る程度の口付けを施した。

「ん………っ、やっ…」

むずむずと肌を過ぎる感覚に、均整の取れた下腹部が細かく痙攣する。
肝心な所を放置された政宗は、とうとう我慢が出来なくなったのか。手荒く下帯を脱ぐと、自身をそっと扱き始めた。

長い指が、屹立した自身に絡む。
溢れた先走りを纏い、亀頭から根本へ滑らかに上下する様を、小十郎はじっと凝視した。

「……っ、見てんなら……んっ、触れよ 」

「ご自分で済む事なら、小十郎なぞ要らぬでしょう」

「……っ!!」

意地悪く笑うと、政宗は顔を真っ赤にして横を向く。
妖艶な仕種で誘うくせに、割りと簡単に恥ずかしがる一面は、何度見ても可愛らしい。

「小十郎っ……」

「冗談ですよ」

「だったらっ……あっ!んぅっ」

政宗の手をはね除け、小十郎の手が勃ちきった自身を包む。
親指の腹を鈴口に充て、括れの部分を緩やかに扱いてやると、政宗は腰を一瞬浮かせて息を詰めた。

小十郎に握られる自身は、漸く触れて貰えた喜びを表すように、次々と透明の体液を吐く。幹をとろとろと伝った粘液は、瞬く間に小十郎の指を濡らし、上下の扱きをより円滑にした。

上気する胸の上で凝り続ける乳首も、そのまま放ってはおかない。
再び唇を落とし、広げた舌で小さな粒を飴玉のように転がしてやる。

「はっ、あっ……っあ、ぁん」

次々襲いかかる刺激に、政宗はいやいやと首を振る。濡れそぼった自身は下腹に張り付きそうな程反り勃ち、せり上がる陰嚢が急激に皺を増やす。
あとほんの少し扱いてやれば、鈴口がパクリと開き、嬌声と共に勢い良く精が噴き出すだろう。

しかし小十郎は 、近づく限界を知りながら突然手を離し、政宗がうつ伏せになるよう身体の向きを変えさせた。

「んっ、……こじゅ………何?」

辛そうに息を吐き、政宗が振り返る。
小十郎は言葉もなくうなじから背骨を舐め、政宗の細腰を上げさせると、程好く締まった双丘を左右に大きく開かせた。

薄暗いとは言え、部屋の明度は流石に夜とは比べ物にならない。
それによって詳らかになる光景を察したのか、政宗は慌てて脚を閉じ、逃げようとした。

「政宗様、どうかそのまま」

「っあ、嫌だ、だめっ……小十郎」

「いつもは素直に見せて下さるではありませぬか」

「だけど今は明る………っや、あっぁ」

腿の内側を抑えられた政宗は、結局逃亡を許されず、引き寄せられるまま小十郎の顔の前に双丘を突き出す格好を取らされた。

きっと今は耳まで真っ赤にして、唇を噛み締めているのだろう。羞恥に堪える端正な顔を目視出来ないのは残念だと思いつつ、小十郎は双丘の中央に座す蕾に狙いを定める。

「ひっ!ぁ、あっ……やっあ」

硬く尖らせた舌先で、蕾の中心をツンと突く。ただそれだけで、政宗の後孔はヒクヒクと皺を収縮させた。

ふぅっと息を掛けながら、唾液を塗りつけるように舌を這わせる。
丁寧に、的確に。
固く閉ざしたそこを解そうと、小十郎は盛り上がった肉襞の一つ一つを丁寧に舐め、唇全体で吸い上げた。

「っ…ん…ぁっ、はっあ……」

「政宗様、力を抜いてください」

「あっ!舌入れんなっ……んっぁ、あっ」

窄みが緩んだ瞬間をつき、肉の襞から粘膜に向け舌を潜り込ませると、後孔の中がぐにゃりと蠢く。
奥ゆかしい色合いのそこは、一見男など全く知らぬような無垢を感じさせるが、中身は赤く熟れ、欲しい欲しいと淫靡に収縮を繰り返していた。

淫らに咲き始める政宗を存分に味わいながら、小十郎の手は脇腹を回り、切なげに涎を垂らす自身を無遠慮に扱き始めた。

「あっん!ぁ、あっ、あっ、ぁっ!」

手の中で追い詰められる自身は、摩擦に併せて再度昂りを取り戻す。

意識が前方に集中すると、政宗は後孔を舐められている事を忘れたように腰を突き上げ、小刻みに臀部を揺らす。
白い双丘が汗で湿り出し、小十郎の唾液をたっぷり送り込まれた蕾は、不規則にヒクついた。

「イクっ、いっぃ!……すげっ、……あっ」

「どうぞ……存分に」

「ぁ、あっ!あっ!……出るっ、出る小十郎ぉっ」

青筋を立たせ、一際張りつめた自身が解放を訴える。
裏筋を攻めながら、括れと亀頭を強く上下した直後、政宗は泣き声に似た声を上げ、粘つく白濁を飛ばした。







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