* 本文(R18) *

□猫と瓜
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「あっぁ、はぁっ…はっ、……」

「政宗様」

「っ、小十、郎……まだ、ぁっ、まだ出る…」

大半を吐き出した後も、自身はピクピクと脈打ち、残滓を溢す。
快感の余韻に打ち震える政宗は、畳に顔を押し付け、息を切らしていた。

しかし次の瞬間、政宗の身体がガクンと大きく揺れる。

「ふっ!あ……小十郎っ…」

「動くと零れてしまいますよ」

「………はっ、……ぁ」

二本の指で後孔を開き、小十郎は小瓶の中の香油を、政宗の体内に注ぐ。
瓶から垂れた油は、ゆっくりと内壁に染み込み、襞や粘膜をてらてらと光らせた。

部屋中に漂う芳しく高貴な香り。政宗が平素愛用し、目合う時は一段と強く放たれる匂いだ。


傷付けないよう緩やかに抽挿を繰り返し、少しずつ指を埋め込むと、絶頂間もない政宗の背筋が弓のようにしなる。
小十郎は溢れ出た香油を塗りつけ、指の数を増やした。

「うっ……あ、あっ……はっ……」

内壁の方向に従い、人差し指と中指を斜め下に差し入れる。
二寸ほど進んだ場所で挿入を止め、指の腹でそこを強めに擦ってやると、一層悩ましげな声が部屋に響いた。

「あっ、ん!…はっあ、ぁ……こじゅ…まだイッたばっか……あぁっ!」

「貴方のここは、小十郎の指を美味そうに食ってますよ」

「でもっ……ひっ、あぁ…ん」

小十郎が指を動かすたび、政宗は過敏な反応を見せた。

いじらしくも淫らで、快楽に素直な身体。
例えば何日もこの部屋に閉じ込め、淫蕩の限りを尽くしたら、どんな風に咲き乱れるのだろう。

決して叶わぬ妄想が、心の中を埋め尽くす。
猛り狂う欲望に理性を奪われ、小十郎は衝動的に政宗の肩口に歯を立てた。

「あっ、くっ……小十ろっ…」

「政宗様………お許しを」

形ばかりの謝罪をしながら指を引き抜き、柔くなった後孔に己の雄を押し当てる。
異物の存在を感じ、襞は僅かに入口を閉じたが、接吻をするように軽く突いてやると、次第に小十郎を飲み込み始めた。

「あっ、はぁ……ふっぅ………っぁ」

突き立てた雄を体内に沈め、徐々に律動を加える。
油と唾液を含んだ粘膜は、小十郎の雄に中を乱され、ぐちゅぐちゅといやらしい水音を立てた。

手を滑らせ、果てて間もない政宗の自身を探ると、そこは既に男特有の反応を見せていた。
さっきの射精などなかったような淫奔さに小十郎は酷く興奮し、加減を忘れて後孔を貫く。繋がりが深くなるたび、小十郎の茂みが双丘を撫で、互いの陰嚢がこそばゆくぶつかり合った。

「んっ、あぁっ!やっ、んっ」

「はっ……っ……」

「こじゅっ……あっ、あぁ、あっ」

歓喜の声を上げながら、政宗は鳶色の髪を振り乱す。
激しく律動を加える小十郎もまた、額や胸元に汗を浮かべ、快楽の波に溺れていた。

「こじゅろっ、またっ……!はっ!はぁっ!」

指で撫でてやった辺りを何度も突き、荒々しく抉った刹那、政宗は内壁をこれ以上ないほど締め付けた。

規則的にきゅうきゅうと、熱を持った粘膜が蠢き、内腿が震える。


しかし、立て続けに精を放った政宗は、流石に疲れ果てたのだろう。自身に触れられる事なく絶頂迎えると同時に手足の力を失い、畳の上に突っ伏した。

「まっ、政宗様っ!」

「は、きっつ……テメ、いい加減にしろよ」

肩で息をしながら政宗が身を捩り、体内から小十郎がズルリと抜ける。

障子から差す仄かな光に照らされる、線の細い肢体。体温の上昇と共に浮かび上がる赤い古傷は、痛々しくも妖しく、小十郎の目を惹き付けた。

「申し訳ありません……」

おずおずと手を伸ばすと、政宗はそれに掴まって起き上がり、上目がちに小十郎を睨む。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫もクソあるかこのバカ野郎。ったく………人のケツばっか見やがって」

「は………?」

「あんまりじゃねぇか。俺はお前の顔を見に来てやったのに」

気に入らなかったのは、無理をしたからではなく………そうか。
政宗の意図を理解した小十郎は、正直参ってしまった。

呆れたのではなく、言葉通り。
この人は、何処まで自分の心を拐うのだろうと、心臓が苦しくなったのだ。

「会いたいと思って下さるなら、お側に置いてくだされば良いものを」

「お前はすぐに根を詰めるから、少しはゆっくりさせてやりたかったんだ。でも………」

「でも、何です?」

「………You're so mean, 揚げ足を取るな」

意地の悪い奴だ。

政宗は眉間に皺を寄せ、少し拗ねた表情で話を絶ち切った。
それから再び身を横たえると、仰向けのまま膝の裏に手を挟み、両腿を広げる。

「おい、お前……まだだろ」

「……………」

「来いよ、小十郎」

「宜しいのですか?」

「だからいちいち…………あっ、ふぅ」

自ら開かれた後孔に導かれるように、小十郎は政宗の中に雄を浸入させる。
繋がり合う瞬間の強い快感に、二人同時に息を詰めた。

「小十郎……ぁ、あっ、はぁっ…」

「っ、政宗……様」

「あっ、気持ちぃっ……こじゅろ……」

甘やかな声で哭きながら、政宗は両手を差し出す。
小十郎はすかさずそれを捕らえると、固く指を絡め、最奥へと腰を押し込んだ。

「はっ、んっ、あ…激しっ……あぁっ!」

重なり合う腹の間では、萎える間もなく屹立した自身が、ぬるぬると尖端を擦り付ける。

苦し気に、嬉しげに。内部に収める小十郎の脈動を感じ取り、表情を変える政宗を見下ろしながら、小十郎は久方ぶりに生きている実感を味わっていた。

いつどんな時も、政宗は小十郎を掻き立て、翻弄し、そして夢中にさせる。その存在は小十郎にとって弱味であり、強みであり、 生きる意味そのものだ。

だからそうーーーーー

一秒たりとも、この人の傍を離れたくない。

「っは、……ふっ………」

「こじゅっ、んっ!あぁ……はっぁ」

「はっ……っ、くっ!」

最期に向けて、小十郎は大きく腰を穿つ。
政宗は隻眼を潤ませ、全身で小十郎を受け止め続けた。

「やっ……あっぁ!んーーー」

胴震いをして小十郎が精を放つと、政宗もほぼ時を同じくして爆ぜる。
内壁の締め付けに抗う雄は、負けじと自らを最奥に捩じ込み、何度も何度も精を注いだ。










「おい、小十郎」

「何でございますか?」

「そう急いで戻らずとも良いだろう。まだ休暇は残ってんだし、お前はもう少しゆっくりしていけよ」

政宗は縁側に近い座敷に寝そべりながら、慌ただしく荷造りをする小十郎を目で追う。

しかし、小十郎は全くと言って良いほど話を聞かない。屋敷中を走り回ってはあちらこちらを片付け、持ってきた衣類や書物を行李に詰める。

「小十郎!人の話聞いてんのか?」

「聞こえてますよ。小十郎はそこまで爺ではありませぬ」

「そーゆー意味じゃねぇよ!ったく、はぐらかしやがって」

ぶつぶつ文句を言う政宗を横目に、小十郎はまとめた荷物を縁側に並べると、馬小屋から馬を連れてきて、本格的な帰り支度を始めた。

「馬には乗れますか?」

「大丈夫……って、オイ」

「それは宜しゅうございました」

政宗には申し訳ないが、このまま城に帰ると決めた。
休みなどなくとも、やはり普段通りの生活が一番だ。

思い込むと止まらない誰かさんのお陰で落ち着く日などないが、慌ただしくて賑やかな日常が、自分には一番合っている。

「小十郎!」

「畑の作物も気になりますし、投げ出してきた仕事も心配です」

「水遣りはちゃんと指示した。仕事だって問題なく回している」

政宗は、あくまで自分の意見を曲げる気はないらしい。
よろよろ立ち上がると、考え直せと言うように、小十郎の袖を引いた。

「That’s enough!俺はお前の事を考えて言ってんだぞ。今休まなきゃ、お前はまた働き詰めになるだろうよ」

「お気持ちは有り難く頂戴します。ですが、小十郎はもう真っ平です」

「なっ……」

小十郎の言い様に、政宗はキッと目を吊り上げた。

やはり分かっておられない。

嘆息しながら小十郎は縁側に腰を下ろし、顔を強張らせた政宗の手首を掴んで、指先に優しく口付けた。

「こらっ!何してんだよこのバカ」

「あぁ、全くもって喧しい。貴方こそ少しは人の話を聞きなされ 」

「だってお前がっ」

「えぇ、確かに真っ平ですよ。貴方の居ない日々など、これ以上堪えられそうにありませぬ」

引き戻そうと抵抗する手が、ピタリと動きを止める。
小十郎を睨み付けていた目も段々と険しさを失い、少し間を置いた後、恥ずかしそうに伏せられた。

「瓜も休みも要りませぬ。小十郎が欲しいものは此所に……。そればかりは、自分でも歯止めが効かぬのです」

「……………」

「政宗様、貴方のお側に戻っても?」

「そんなに言うなら、まぁアレだ。………好きにしやがれ」

「承知」

小十郎は静かに微笑むと、政宗を強く抱き締める。

「うわっ!」

「城ではこう言った事が出来ませぬゆえ、暫しご容赦を」

「苦しい、小十郎。なぁ………」

西日を横顔に受けながら、腕の中。

悪戯な猫が、クスクスと笑った。








[瓜と猫 終]





〔後書き〕

国分寺エロ頑張ろうよ企画第二弾!エロを書いていると、脳の中でずっと小政が絡んでいます。これぞ究極の自己生産?(笑)

まあこんな感じですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです(^∇^)
読んでいただき、ありがとうございました!
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