七つ子の夢・T

□第九話
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遺跡とは、過去の人々の生活の痕跡がまとまって残存しているもの。及び工作物、建築物、土木構造物の単体や施設の痕跡、もしくはそれらが集まって一体になっているものを指す。


シャイコス遺跡は、現代の帝国の発展と繁栄に欠かせない魔導器と、その動力となる魔核が多くを出土する遺跡だ。帝国の繁栄に欠かせない物が多く出土するのだから、勿論この場所は帝国の管理下だ。ただし、このテルカ・リュミレースという世界に国は帝国だけ。この世界にある多くのモノは帝国のモノということだ。


遺跡は長い間風雨にさらされてきたためにか、白を基調とした石造りの柱や石畳は表面などが粗く削れている。それに魔物にも荒らされたらしい。明らかに獣の爪痕だと判断できるものがある。


魔核泥棒の嫌疑を――主にユーリからかけられている自称天才魔導士の少女、リタ・モルディオの案内で遺跡に到着したエステルは、フレンがいないか遺跡内を見渡す。


「騎士団の方々、いませんね…」


落胆する彼女を横目にウィスタリアは数歩先を進んだところでしゃがみ、背の低い雑草を掻き分けて地面を見た。そこには人の足跡がある。まだ新しいものや、古いものまで複数だ。


「足跡はあるけど、…どれが騎士ので盗賊のかは分からない、か」


「でもこの足跡、まだ新しいね。数もたくさんあるよ」


「騎士団か、盗賊団か、その両方かってとこだろ」


たくさんの足跡があり、どれが騎士団ものか盗賊のものかまでは区別できない。ただし、まだ新しいもの混ざっているので案外遺跡内に誰かいるかもしれない。
騎士団も盗賊団も両方いてくれればいいが、そううまくことが運ぶはずもない。


「ほら、こっち。早く来て」


ゴーグルをかけ、腰にはバッグを提げていつでも調査ができるような服装の少女――リタが、地下へと続く入口の前で皆を待っていた。おそらく彼女のすぐ側にあるあの入口が、最近発見されたという地下への入口だろう。


「へぇ〜。これが…」


興味津々でウィスタリアは入口を覗き込む。地下への入口なのだから、階段は当然地下に延びている。
好奇心がくすぐられ、子供のような冒険してみたいという気持ちが湧いてくる。だがそれは、ユーリの言葉で霧散した。


「モルディオさんは暗がりに連れ込んで、オレらを始末する気だな」


「……始末、ね。その方があたし好みだったかも」


二人とも、にやりと悪辣な笑みを浮かべた。しかもリタの言葉には、決して冗談ではない彼女が本気であることの響きがある。


「なんか怖いよ。二人とも…」


「不気味な笑みで同調しないでよ…」


「な、仲良くしましょうよ」


ユーリのリタの一触即発、焚き付ければすぐに爆発しそうな不穏な空気に、他は冷や汗を流した。だがそんな空気をぶち壊すのがいた。


「うひゃっ?!」


「!」


リタの悲鳴に、その場に流れていた不穏な空気が一気に霧散する。驚いた面々が彼女の方を向くと、彼女の足下に真っ白な猫――ルウがいた。


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