七つ子の夢・T

□第六話
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半強制的にハルルの木を治す手伝いをすることになったウィスタリアだが、それについてはあっさりと受け入れた。ハルルの木が復活し、花が見られるのなら喜んで手伝う。
だがクオイの森に向かいエッグベアの爪を採取する前に、やっておかなければならないことがあった。


先ほどユーリと共に倒し、町外れに放置していた魔物の遺骸にワイヤーを巻きつけ、引きずって街の外に出る。


「なんで魔物の死体なんか持っていくの?そのままにしておけばいいのに」


「こんな気分の悪い物を置いといたら、街の人達に迷惑でしょう?それにハルルの木が枯れた原因が魔物の血なら、あのまま放置するなんてできない。またどんなことが起きるか分からないからね」


「なら私もお手伝いします」


「大丈夫。倒したのは私だから、後始末は責任持って自分でしないとね」


手伝ってくれる好意は嬉しいが、自分でしたことの責任は自分で取るのが信条だ。


魔物を倒したのは私自身だから、後始末は私がしなきゃ。


エステルを笑顔で制してワイヤーを引っ張った。
魔物を引きずるので、その重さにワイヤーが手に食い込むが、頑丈な皮製の手袋のおかげで手はしっかりと守られている。そのまま引きずって行こうとすると、ユーリに止められてしまう。ウィスタリアは怪訝な表情で彼を見上げた。


「睨むなって。手伝うだけなんだからよ」


「睨んでないってば。…て、ちょっと!」


ワイヤーを奪って、ずんずんと先に進む幼なじみを慌てて追う。
こっちは苦労して魔物を運んだというのに、幼なじみは易々と運んでいく。男女の差なのだろう。鍛え方が違うのもあるだろうが、やはり力は男が上だ。
それが気に入らず、ユーリに怒りの矛先が向くのはおかしいが、それでも睨んでしまうのは止められない。
彼に追いつき、綺麗な顔を睨むように見上げた。やはり大変そうには見えない。それが悔しかった。


「ん。どうした?」


「何でもない。…手伝ってくれて……ありがとう」


「別に礼を言われることじゃねえよ。あとさっきの訂正な。倒したのはお前じゃなくて、俺」


手柄の横取りはいけねーなあ、と口角を上げ皮肉を言う幼なじみの横腹に肘鉄を食らわせた。



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