七つ子の夢・T

□第二話
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帝都ザーフィアスの下町の小さなパン屋から、ウィスタリア・ラズワルドの一日は始まる。


「それじゃあ、行ってきます!」


「走って転んで、子供達のおやつ台無しにしないようにね」


「分かってますって」


子供達のおやつをバスケットに詰め、遊び場所の噴水広場に向かう。


今日は噴水の水道魔導器の修理の日だが、すでに修理は済んでいるだろう。修理が済んだら水遊びをするんだとテッドが言っていたから、もう子供達は集まって遊んでいるかもしれない。


よく遊んでお腹を空かせて、きっと首を長くして待っているだろう。


約束したのだ。子供達と。修理が終わったら、一緒に遊んでおいしいおやつを食べようと。


ウィスタリアは早足で坂道を下り、通りの角を曲がって、急いで噴水広場に向かった。


そう。急いでいたのだが――。


「!」


視界にちらついた見覚えのある姿に足を止める。素早く建物の影に隠れて、そっと顔を覗かせた。そして見たものは、物騒な気配を漂わせる二人組――ウィスタリアと“ある意味”で関係がある人物達だった。


―――どうして、“赤眼”の連中がここに?

気配を消して、声を殺し、密やかに会話する姿はさすが赤眼というべきか。きな臭い事情があると見える。


しかし、なぜ帝都に?いや、正確に言えば下町に連中がいる?


あまり思いたくないが、下町には貧困層が多い。貴族が持っているような豪奢な貴金属類は無いに等しい。あっても、ちょっとした宝物ぐらい。


それでも下町の人達にとってはとても大切な――。


そこで頭を振る。思考が別のところに行ってしまっていた。
とにかく、暗殺集団を雇える人間が下町にいるとは思えないし、…いてもなぜ赤眼を?貴族でも暗殺する気か?


「ウィル。ここにいたんだ!」


「っ。テッド…」


しまった!と思ったがもう遅い。赤眼は消えていた。テッドの声に反応したのか、自分の気配に気づいたのか。それともその両方か。どちらにしろまずい。


内心で舌打ちをし、テッドに笑顔を向けた。


「もしかしてあまりにも遅いから、迎えに来てくれたの?だったらごめんね。すぐに行くから」


「違うよ。そんなんじゃないって。広場が大変なことになってるんだ!」


「えっ、どういうこと?」


「とにかく一緒に来て」


「う、うん」


いつも明るく元気なテッドではない。


何か大変なことが起きたのだと感じ、テッドに手を引かれて広場に向かった。


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