航海

□第七話
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幼い時分と言えど、グレイスが教わり、修得してきた技は暗殺術だ。

技は、業“ワザ”だ。

生きる為の術として、民族の苦痛に満ちた長い歴史の中で発達し、研かれてきた。それを数多くの子供と共に教わり、そして生き残った。
したい、したくないなど自分の意志は問わない。何故なら、そうでなければ生きていけなかったからだ。

暗殺術は、文字通り人を殺す為にある。
人の目の触れない闇の中で、密かに命の灯を消す為に。

如何に確実に命を奪うか。

如何に確実に気付かれずに殺すか。

如何に確実に息の根を止めるか。

道具を使っても良い。剣でも、ナイフでも、針でも、棒でも、縄でも、石でも、毒でもーー。

あくまで“殺す為”であって、苦しめる為ではない。

“一撃必殺を心得よ。”

暗殺術を教えていた大人の一人が言っていた言葉だ。

顔は朧気だが、グレイスはその言葉だけはしっかり覚えていた。

おそらくその人物の暗殺に対するポリシーだったのではないかと、成年した後に思うのである。

殺しに罪悪感はない。人の死を見ても何も思わない。だが、殺しに嗜虐趣味は求めない。そんなものは持っていない。

暗殺はあくまで生業なのだ。
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