七つ子の夢・U

□第三十三話
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無我夢中で短刀を突き刺した瞬間、ドスっと鈍い衝撃が手に伝わる。


それは時が止まったと錯覚してしまうほどの静寂が訪れた瞬間でもあった。


固く目を閉じているため、周囲が今どんな状況なのかわからない。
だが手に生温かい液体か触れ、それが一体何なのか、考えただけで血の気が引き、体が震えた。


恐る恐る目を開けると、短刀を刺した箇所から鮮血が溢れ、それを見て思考が止まり、呆然とする。
生温かい血に手が赤く染まっていくのを、震えながら見つめていた。


「ぐぅ…っ」


頭上から聞こえた呻き声にはっ、として見上げれば、男が眼球が溢れんばかりに目を見開き、血走った目で自分を見下ろしていた。
視界の端に男の太い腕がゆっくりと動くのが見えて、すかさず短刀を放して逃げる。


「ぬぅっ」


男は苦悶の表情を浮かべ、腹に刺さった短刀を引き抜いた。
短刀を引き抜いた為に出血はひどくなり、血が失われていくに従い顔面が蒼白になっていく。


男の血塗れの手から短刀が固い地面に落ちて、カランと音を響かせる。


その音に肩が震えた。


ゆっくりと倒れていく男の体。倒れて痙攣する男の口から、ひゅーひゅーと弱々しい呼吸が聞こえると思っていたら、ふつりと聞こえなくなった。


それっきり、男は動かない。動こうとしない。


そしていつの間にか、男を中心に大きな赤い染みが広がっていた。


それらの事実が一体何を意味するのか。理解した瞬間、口から意味のなさない声が出る。


「あぁ……あっ、ああぁっ…ぁぁあああ…ぁっ…あああ…」


後退り、口元を覆おうと手を近付ければ、鼻腔を鉄錆の臭いが刺激する。


鮮血に染まった自分の手。


目を背けたくても背けられない、認めたくなくても認めなければならない罪の証。


瞼を閉じた瞬間、目の端から大粒の涙が溢れた。

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