七つ子の夢・U
□第三十三話
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人が突然消えるという噂の真偽を確かめる為、ヘリオードを訪れていたユーリ達とリタを宥め――これ以上騎士の世話になるのは嫌なので、急いで外に出た。
そしてウィスタリアとリタが、なぜ二人して騎士団に捕まっていたのか説明する。
リタは、以前ヘリオードの魔導器が暴走した事もあり、心配だったのでエアルクレーネの調査の前に少し様子を見に来ていたのだという。そうしたら偶然にも、任務でここを訪れていたウィスタリアと再会したのだ。
ウィスタリアはリタに付き合う形で魔導器や労働者キャンプを調査していたら、運悪く騎士団に見つかり捕まってしまったという。
「リタはともかく、お前が捕まるなんて意外だな」
「ちょっと。それどういう意味よ!」
ユーリの失礼な発言にリタは憤慨し食って掛かるが、彼は気にしたふうもなく、寧ろ無視する。
ウィスタリアは肩を竦めてみせる。
「まあね。一人で脱け出すことも出来たんだけど、流石にリタを置いていけなかったし。それに得策でもないから」
「どうして?」
「一人だけ逃げれば、一緒にいたリタの立場が危うくなる」
ウィスタリアが自分を慮ってくれていたことを知り、リタはハッとした表情を浮かべた。ウィスタリアが一人で逃げれば、残されたリタは厳しい尋問を受ける可能性は大いにある。
だが次のジュディスの言葉に憤激する。
「例え一緒に逃げても、頭に血が昇った彼女を宥めながらでは、大きなリスクを負うことになる――とういうところかしら?」
「何ですって!」
「へぇー、凄い。よくわかったね」
「あ、あんたねえ…っ」
ジュディスの言葉は単なる推測に過ぎなかったのだが、どうやらほぼ当たっていたらしい。
ウィスタリアは素直に驚いて、ジュディスに小さな称賛の拍手を贈った。そのためにリタに思い切り睨まれるが、全く気付いていない。
「成程。的を射た意見だな」
「確かに。リタならおかしくないかも」
「何ですって!もういっぺん言ってみなさいっ!」
納得する男二人の言葉を聞いて、遂に怒りが頂点に達したリタの周囲に術式が浮かび上がる。彼女は本気だった。
慌て、怯えるカロルの前にウィスタリアが庇うように立って、今にも術をぶっ放そうとしているリタを宥める。
「まあまあ。リタ落ち着いて」
「落ち着いてられるかっ」
毛を逆立てた猫のようなリタを見て、ウィスタリアは内心でため息を吐いた。
――さて、どうしよう。
さして困ったようには思っていないウィスタリアは暢気に考える。
結局、リタを落ち着かせたのはエステルだった。