アンケート小説置き場
□並盛高校生徒会へようこそ!!〜意外な事実編〜
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「……みんな、楽しそうだな…」
出された紅茶を一口飲み、綱吉は嬉しそうに生徒会室を見回した。
「…テメェは楽しくねぇのか」
見た目ぶっきらぼうだが内心かなり不安そうにそう言ったのは、もちろん生徒会長のザンザス。
「いえ、楽しいです!!それに、生徒会のお仕事が素晴らしいって事もよくわかりましたし」
私も頑張りますね、そう言ってはにかんだ綱吉。
ザンザスの心の内では先程の不安を打ち消したが、逆に激しい動揺が襲ってくるのだった。
そしてその動揺で紅茶のカップを彼が落としたと同時に、少し離れた場所からもバサバサと紙が散らばる音が聞こえた。
「何…?」
綱吉が慌てて振り返ると、ちょうど舞っていた書類がヒラヒラと下降して床に落ちたところだった。
「はひ――っ、すみません〜〜っ」
書類の山の中心で座り込んでいたのはハルだった。
どうやら隣の部屋へと繋がっているドアのちょっとした段差につまずいたらしい。
後からちょこちょことマーモンが歩いてきた。
「全く…何でそうも盛大に転べるかな」
「す…すみませんですぅ…」
「女だからって遠慮しないからね。どんどん働いてよ」
「了解であります!!ハルはやりますよ〜っ!!」
そして急いでばら撒いた書類を集めると、またせわしなく動き回る。
どうやらマーモンのスパルタにも似た指導を受けているらしい。
綱吉も手伝おうとしたが、ザンザスの落としたカップも気になり、結局ハルに声をかけるタイミングを失ってしまったのだった。
「……で?」
「はい?」
今度はお菓子を取って食べようとした綱吉。
やっぱり紅茶にはクッキーだ。
「さっきの話の続きだ。俺に何か聞きたいことがあるんじゃねーのか」
そう言われてやっと「あぁ!!」と思い出す。
どうしても聞きたい事があったのだ。
「あの……怒りません…か?」
「あぁ」
深く頷いたザンザスに安心し、綱吉は疑問をぶつけた。
「…ザンザスさんが…恐怖で学校を支配しているって聞いたんですけど……」
「……誰に聞いた」
「と、友達に…。でもただの噂かもって……」
やっぱり失礼だったんだ…と顔をそらす綱吉。
別の話題に変えようと思ったが、それより先にザンザスが声を発した。
「おまえはどう思った」
「……へ?」
「それを信じたか?」
思わず相手の顔を見る。
確かに顔には傷跡があるし、目つきだって決していいとは言えないかもしれない。
けれど怖いなんて思わないし、もちろん恐怖でここを支配しているとも思えなかった。
「いいえ。だってザンザスさん、最初に会った時私を助けてくれたじゃないですか。そんな貴方が悪い人だなんて信じられません」
「……そうか。……それでも、それが本当だとしたら?」
綱吉はしばらく考え込み、それから真っ直ぐに彼を見て言った。
「もうさせません。恐怖じゃみんな幸せになれないし、きっと本人も幸せじゃありません」
「……………」
キッパリと言いきられたザンザスは見た目以上に驚いていた。
今までこんな事を言われた事もなければ、ここまで強く主張された事もなかったからだ。
それから突然クツクツと笑い出した。
「ザン…ザス、さん……?」
訳がわからずとりあえず綱吉は手にしていたクッキーを口に含む。
それを飲み込むが、味など覚えていなかった。
「くっ……ぶはっ………いや、悪い、何でもない」
頭にハテナマークを浮かべて綱吉は首を傾げた。
まだ笑い続けているザンザス。
でもその顔は今までの無表情とは違って、少しドキッとした。
そこでハッとなり、慌てて立ち上がる。
そんな彼女の行動に、ザンザスは笑いを抑えて不思議そうに見上げた。
だがそんな視線はお構いなしに綱吉は走り出すと、あろう事かザンザスの次に彼女の近くにいたベルに抱きついたのだ。
「ちょっ、え、何?!」
立って棚の中の書類を整理していたベルはもちろん焦る。
そして抱きついてきたのが綱吉だと知ってさらに焦った。
「……ベル…」
ザンザスは眉間にしわを寄せてあらん限りの眼力でベルを睨みつける。
「は?!何で?!これ、俺悪くないよね?!てかどうしたのさこの子」
綱吉はこれでもかというくらいベルにしがみつき、離さなかった。
ザンザスはそれを見てふと思い出す。
確か出会った時も彼女はこうして自分に抱きついてこなかったか。
だが、その行動の意味がわからない。
「ほら、え〜っと…綱吉?早くどいてくんないと王子ボスに殺されちゃうから〜っ」
グイグイと引き剥がそうとすると、やっと綱吉は離れた。
そしていきなり頭を深く下げ、「すみませんでした!!」と謝った。
「……おい綱吉、これはどういう事だ」
あの時と全く同じ。
抱きついて離れて、謝る。
「あの……えっと……」
言いにくそうに、綱吉は話し出した。