アンケート小説置き場

□幼いなりに大好きだから
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仕事部屋とは違うそこは、見える所には物騒な物は置いていない。
綱吉もここに来る事が多く、おもちゃが散乱していた。
 
 
ザンザスはいつものように大きめのソファーに座り、膝の上に綱吉を乗せた。
 
「じゃあ、一緒に食うか」
 
「ざー、あげるの!!」
 
どうやら全部くれるらしい。
 
「綱吉、おまえが食べさせてくれるか?」
 
「うんっ」
 
綱吉は嬉しそうに頷くと、ザンザスが開けた包みからチョコを取り出す。
それは丸いトリュフだった。
そして手に取ったトリュフを差し出す。
それを口に含み、その幼い指についた粉までも舐めるザンザス。
 
端から見れば微笑ましい似てない親子に見えなくもないが、本人…少なくともザンザスにとっては立派な恋人同士の甘い時間である。
 
 
「美味いぞ、綱吉。ありがとな」
 
「うんっ」
 
 
 
そして庭を歩いていたスクアーロがちょうどその部屋の横を通り過ぎた時、窓の中を覗いてしまった。
そこには、頬を染めて緩みきった顔でチョコを食べる自らのボスと、その膝の上に乗り嬉しそうにチョコを食べさせている幼い子供の姿があった。
 
 
「う"お"お"お"い…何だありゃあ……」
 
だが、明日のボスの機嫌はいいかもしれない…つまり、自分に被害が少ないかもしれない。
大抵、綱吉がいればザンザスの機嫌はいいのだ。
今回もなるべく長くここに滞在してくれ…そう願わずにはいられないスクアーロだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
おまけ
 
 
「綱吉……もう行くのか…」
 
「ざー…」
 
綱吉が帰る日。
門の前でザンザスが見送る。
だがその表情は浮かない。
いつもこんな感じなのだ。
 
「…ツッ君もザンザス君も寂しそうね…」
 
奈々もそんな2人を見て寂しそうにする。
そして「そうだわ」と手を叩き、これまた仕事を抜け出し見送りに来ていた9代目にこうお願いした。
 
「9代目、私達の滞在、あと1日伸ばしていただけますか?」
 
「いや、しかし家光は…」
 
そう。綱吉の父である家光にくっついてよくここに来るのだが、その家光はまた移動する。
それに合わせて奈々と綱吉もここを離れるのだ。
だが奈々は嬉々として言う。
 
「大丈夫です、後で合流しますから。こんなに寂しそうな2人、見ていられないもの」
 
その言葉に、ザンザスと綱吉は嬉しそうに見つめ合い、抱き合う。
正確にはザンザスが綱吉を抱き上げる形になるのだが。
 
ちなみに、家光は荷物の支度でここにはいない。
 
 
「奈々、礼を言う」
 
「あら、いいのよ。ザンザス君も私の息子みたいなものなんだから」
 
我が子達のためなら粘ってみせるし、夫との少しの別離も惜しまない。
普段は無邪気で子供らしいところがある奈々だが、子供の事となるとやはり母親である。
 
 
 
「ざー、もっとあそべる?」
 
「あぁ」
 
「やったぁ!!」
 
 
息子のザンザスが丸くなったのはいいが、綱吉を独占されてばかりで少し面白くない9代目。
だが、奈々の頼みと綱吉の喜んでいる笑顔には逆らえなかった。
 
 
「家光…お互い大変だのう…」
 
 
まだこの事を知らないもう1人の被害者に、そう呟くのだった。
 
 
 
 
 
 
 
→後書き
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