小説1
□ぬくもり
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「と、わしはそろそろ仕事に戻らねば」
9代目はそう言うと、綱吉の元へ行き抱き上げた。
後ろから抱き上げられた綱吉は「ぅわぁ〜」と言いながら楽しそうにはしゃいでいる。
そして9代目の顔を見ると嬉しそうに笑った。
「じ〜じ!!」
そう呼ばれた9代目は名残惜しそうに綱吉に頬擦りする。
「おぉ綱吉君、もっと君と一緒にいたいが、じ〜じはお仕事があるんだよ〜。また会いに来ておくれよぅ」
・・・正直キモイ。
かつてこんな姿の9代目をザンザスは見たことがなかった。
「じゃあ、ツッ君もそろそろお昼寝の時間かしらね〜」
奈々がそう言うと、9代目に降ろされた綱吉はたちまちザンザスの足元にしがみついた。
周りはもちろん、ザンザスもビックリである。
そんな中、やはり奈々だけは常にマイペースだった。
「あらツッ君、すっかりザンザス君に懐いちゃって〜」
本当の兄弟みたいね〜とのほほんと1人和む奈々。
その後すぐ、我に返った9代目や家光が綱吉の元へ駆け寄る。
「ツナっ、何故父さんよりザンザスに懐くんだ?!」
「そうとも綱吉君っ、こんな暴力男に近づいてはダメだぞっ。さぁ、このわしに存分に甘えなさい!!」
それでも綱吉はザンザスから離れようとしない。
「ざー、バイバイ?」
すごく寂しそうに上目使いでそう言われては頷けない。
この後特に急ぎの仕事もなかったため、ザンザスは「特に用事もないが・・・」と応える。
それを聞いて綱吉はパアァァと目を輝かせた。
「じゃあ、ざーも、おひるね!!」
「あぁ」
いつの間にか、そう応えていた。
それにはまたまた周りもビックリだった。
というか、子供がいてもウザイの一言で蹴り飛ばしそうな彼が今までそうしなかっただけでも十分驚きなのだが。
「それじゃ、お昼寝に行きましょうか、ツッ君、ザンザス君っ」
奈々がそう言うと、ザンザスはその場にしゃがんだ。
「ほら、行くぞ、綱吉」
「・・・・・・うんっ」
いきなり名前を呼ばれて少しきょとんとなった綱吉だが、すぐに笑顔で大きく頷く。
そして呆然としている9代目と家光を置いて、奈々と綱吉とザンザスは仲良くお昼寝に向かった。
「・・・9代目・・・いい息子さんをお持ちですね・・・・・・」
「・・・あぁ、わしも今、初めてそう思ったよ・・・・・・」
部下の話では、その後しばらく廊下に立ち尽くす9代目と門外顧問がいたそうな。
そして、ザンザスに書類を渡しに来たレヴィが見たものは、部屋のソファに生気が抜けたように座り込むスクアーロだった。
「ざー、おあすみぃ」
「あぁ、おやすみ」
「うふふ、ホントに仲良しさんねぇ」
子供部屋では、ボンゴレにはあり得ないような平和で暖かな空気が流れていた。
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→後書き