小説1

□俺と私と10代目
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それからすぐに、女の人が部屋に来た。
すぐといっても今日中であって、来たのは夕方だ。
 
 
 
ドアを開けると、金髪で眼鏡をかけた綺麗な女の人がいた。
 
「あっ・・・あの・・・・・・どうぞ」
 
綱吉はとりあえず、ソファまで案内した。
 
 
仕草が丁寧で、大人のできる女性!って感じだ。
 
 
 
「あなたが沢田綱吉様ですね。初めまして、私、親方様の部下でオレガノと申します」
 
日本語も完璧で、むしろ自分より上手いんじゃないかと思う程だった。
 
「・・・親方様・・・?」
 
「も、申し訳ございませんっ。親方様とは貴方のお父上の家光様のことです」
 
・・・父さん・・・なんて呼び方させてるんだよ・・・・・・。
 
それでも、父さんらしくてつい笑ってしまう。
それに、オレガノさんはすごく感じのいい人だ。
一見クールそうに見えるけど、話してみると安心出来る。
 
 
 
 
「それで・・・何か御用があるとお聞きしたのですが・・・」
 
「あっ、はい。あの・・・・・・」
 
やはり言いにくい。
そもそもオレガノさんは、自分の本当の性別を知っているのだろうか。
父さんの部下だから知っている可能性もあるが、あんなに秘密にしてきた事だ、もしかしたら知らないという可能性もある。
とりあえずは確認だ。
 
「あの、その・・・・・・俺の事・・・知ってますか・・・?」
 
我ながらアホな質問だと思う。
 
「親方様からいつもお聞きしています。可愛い可愛いとそれはもう親バカを発揮していらっしゃいましたよ。写真は常に持ち歩いていましたし。私も、実際にこうして綱吉様に会い、とても感動しております」
 
笑顔でそう言うオレガノさん。
本当にいい人だと思う。
 
なんだかすごく照れる事を言われているが、肝心の事を聞き出していない。
 
しょうがない。ここはストレートにいこうと、綱吉は決心した。
 
「オレガノさん、俺が女だって事は・・・父さんから聞いてました・・・か・・・?」
 
 
 
「・・・・・・・・・・・・・・・」
 
 
 
あ、固まってる。
どうやら知らなかったらしい。
 
 
 
 
一方、オレガノはかなり混乱していた。
 
えっ・・・と、綱吉様が・・・女・・・?
冗談・・・ではなさそうだし、それなら私が呼ばれたのも納得がいくし・・・。
ていうかそういえばかなり可愛らしいし、こころなしか胸があるようにも見えるし・・・。
 
と、かなり脳内パニックになっていたが、そこはさすがというべきか、すぐに冷静になる。
 
 
 
「も、申し訳ございません、その件については知らされておりませんでした・・・」
 
「あ、やっぱりそうなんですか・・・。あの、この事、秘密にしといてもらえますか?今までずっと、家族以外には隠してきた事なんです」
 
「わかりました。他言は絶対にいたしません。では御用というのは・・・」
 
「うん、俺・・・私でいっかな、オレガノさんの前だし。私はここから出られないから、必要な物があるけど買いにいけないんです。かといって男の人にも頼めなくて・・・」
 
「何でも仰って下さい、綱吉様」
 
「あ、それと、その綱吉様っていうの、ちょっと照れくさいです。呼び捨てでいいですよ、それに敬語じゃなくていいですし」
 
「そんなっ、親方様の娘様でありボンゴレ10代目候補である方を呼び捨てなんて・・・」
 
「10・・・代、目・・・?」
 
「はい。残るボンゴレの後継者はもう貴方しかいらっしゃいません。ザンザスも9代目とは血が繋がっていないとわかりましたし・・・」
 
「・・・・・・」
 
 
 
綱吉は足りない頭をフルに使って考えた。
どうやら自分はボンゴレとかいう何かの団体の後継者らしい。
そして、たぶんそれが性別を隠していた理由であり、狙われた理由でもある。そんな気がする。
 
綱吉は、このままオレガノさんから聞けるだけ話を聞いてみようと思った。
もし何も知らないとわかったら、きっと教えてくれない気がするから。
 
 
「あの、じゃあ呼び方はいいです・・・けど、父さんが今どこにいるか知ってますか・・・?」
 
するとオレガノは少し俯き、暗い顔になった。
 
「申し訳ございません。我々もまだ親方様の安否及び現在地は把握出来ておりません。只今全力で捜索しておりますので・・・。大丈夫です、ボンゴレのボスと同等の権限を持つといわれる門外顧問である親方様の事です、きっと何か考えがおありなんですよ」
 

・・・スクアーロ達も言っていた“門外顧問”。
父さんの事だったのか・・・。
何かの役職だろうか。
 
「はい、私も、父さんがそう簡単にやられるとは思えません」
 
するとオレガノは優しく笑い、頷く。
 
「えぇ、そうですね。・・・そういえば、話が少しそれてしまいましたが、必要な物とは・・・?」
 
「あ、はい、あの・・・とりあえずさサラシと、出来れば下着を・・・・・・。あと生理用品がそろそろ必要になりそうなんです・・・」
 
「それは・・・確かに男性には頼めませんね」
 
クスクスと笑い、わかりましたと言うオレガノさん。
やっぱり女同士はいい。
とりあえずは安心だ。
 
それに、少しだけど自分の立場もわかった。
とりあえず、自分はボンゴレとかいうところの10代目候補だという事。
父さんは門外顧問という役職で、トップと同等の権限がある結構偉い地位にいる事。
・・・世界で交通整備してるとか石油掘ってるなんて嘘ばっかりだ。
それを今まで信じていた自分も自分だが。
そしてたぶん、ボンゴレというのはただの会社とかではない。
スクアーロやザンザスを見た瞬間思った。
絶対ヤバイ系だ。
裏の社会とか、そんな感じ?
よくわからないけど。
 
 
 
 
 
「では、早急に頼まれた物を用意いたします。また何かあったら遠慮なく仰って下さい。ここは男性だらけですから何かと不便でしょうし」
 
そう言ってオレガノは立ち上がった。
 
「ありがとうございます、オレガノさん」
 
「それから」
 
「?」
 
オレガノは綱吉のだぼだぼの服を見て、微笑んだ。
 
「服も買ってきましょうか、可愛らしいものを」
 
「女だとわからないものでお願いしますね」
 
「かしこまりました」
 
 
丁寧にお辞儀をし、部屋を後にしたオレガノ。
 
 
・・・綱吉様、可愛かったわ。本当にあの親方様の娘さん?・・・きっとお母様の方に似たのね・・・
 
廊下を歩きながら、安否を心配している上司に対して結構失礼な事を考えていた。
  
 
 
 
 
 
――――――――――――――――――――――――
オレガノ好き。
早くザンツナにしなければ・・・。
下手したらオレガノ×ツナになっちゃう(笑)
2007.12.02
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