小説1

□俺と私と10代目
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あの後、スクアーロが連れてきたボスと呼ばれた人。
名前をザンザスと名乗り、父さんの知り合いだと言った。
 
それから父さんが行方不明だという事、母さんの葬式はまだ少し先になるという事、これから日本を離れイタリアに行く事を告げた。
だがそれだけ言うと、すぐに部屋を出て行ってしまった。
 

そして数日後には、日本を発つと言われた。
だがどうせ綱吉には用意するものなど何もない。
家にも戻れなかった。
それどころか、あれからはほとんど客室のような部屋で軟禁状態だった。
外から鍵がかけられ、中からは出られないようになっている。
幸いその部屋の中にはトイレもシャワーも付いていたので、生活していくには十分なのだが。
 
その間に会った人物といえば、医者とスクアーロだけだった。
スクアーロ、彼は何かと気をつかってくれた。
何か必要な物はないかとか、食事を残したらちゃんと食べろだとか、とにかくちょくちょくと顔を出してくれた。

 
ザンザスとは、あれ以来会っていない。
見た目はむしろスクアーロより怖かったが、悪い人には見えなかった。
 
どうやら自分は何者かに狙われているらしい。
そして母さんがやられた。
きっと自分がいなかったらこんな事にはならなかった。
それを察してか、スクアーロが「おまえのせいじゃねぇ。全部相手が悪いんだぁ」と言ってくれた。
 
 
 

 

数日後、綱吉はあっという間にイタリアへ来ていた。
といっても、空港までも全て車でしかも窓は黒く塗られていたため、外は見えなかった。
もちろん、イタリアに着いてからも似たような車で彼らの本部とやらまで一直線だった。
 
そしてまた軟禁状態。
少し変わったといえば、部屋が以前より少し豪華になったという事くらいだろうか。
 
服などはすでに用意されていた。
日本では、綱吉が女だということは医者だけが知っていた。
少なくとも綱吉はそう思っていた。
だから、サラシなどはその医者がこっそり提供してくれた。
だがそんな人はもういない。
 
綱吉は困っていた。
今身に着けているサラシがもうボロボロだったのだ。
だがこれがなくてはいろいろとまずい。
綱吉とて年頃の女の子。その胸は昨年よりも半年前よりも確実に成長している。
外では男として生活していた綱吉だが、家では普通に女として暮らしていた。
スカートは履かなかったが、サラシは意外と苦しいので帰ったらすぐにとってブラジャーをつけていた。
なのでせめてブラジャーが欲しかった。
用意してある服は大きめの緩いものが多かったので、サラシがなくてもなんとかバレないかもしれないが、やはり何もなくては心もとない。
 
どうにか外出を許してもらえないだろうかと思ったが、イタリアに来てからはスクアーロも部屋に来なくなった。
食事を運んでくるのは黒いスーツを着たおじさんになった。
ある時その人に外出の件を聞いてみたら、自分は何も話せないし決められないと言われてしまった。
 

 
何かあったらこれを押せと言われたボタンが部屋にある。
だがこれは緊急時のみな気がした。病院でいうならナースコールのようなものだろうか。
なので今まで押しにくかったが、どうしても必要になる時がきた。
カレンダーも時計もないが、自分の計算が正しければもうすぐ月末。
 
綱吉には買わなければいけないものがあった。
おそらくここにはないであろう物。
だが絶対に必要になる物。
お金は持っていないしイタリア語はわからないが、お金はとりあえず借りればいいし、買い物も話せなくてもなんとかなるだろう。
そこまでして必要な物。

 
―――先月の月末、綱吉は生理になった。
 
つまり、もうすぐまたそれがくるのだ。
まさか1日中トイレに篭っているわけにもいかない。
だが自分が女だと明かすわけにもいかない。
医者にはバレてしまったが他言しないように頼んでおいた。昔から、医者は信じられる気がした。
母からたまに言われたが、それ以上に父から言われ続けた事。
 

 
―――絶対に他人に本当の性別を知られてはいけない。

 
 
幼い頃はそれが不思議でたまらなかった。
 
だが、今ならわかる。
 
嫌というほどわかる。

 










 

――――――――――――――――――――――
微妙なトコで切れる・・・。
2007.10.10
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