小説1

□俺と私と10代目
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日本にあるヴァリアーの拠点地。
スクアーロは任務の報告をするためにボスであるザンザスの部屋に向かっていた。
 
 

 
 
・・・着くのが遅すぎた。
おそらく犯人は沢田奈々を殺しただけでは退かない。
むしろ本命はきっとあの沢田綱吉だ。
―――ボンゴレ10代目候補。
己のボスであるザンザスもその候補の1人だったが、9代目と血が繋がっていない事が明るみに出てその候補から外された。
本人はさして気にしてはいなかったが。
周りも最近では9代目の息子というよりはヴァリアーのボスという目で見ていたので、今更そんな実子かどうかなどは問題ではなかったようだ。
 
だが沢田綱吉はそうもいかない。
今回の任務は他所からの依頼ではなく、ザンザス自らの考えで命令が下された。
“沢田綱吉を保護する事”。
それが今回スクアーロに任せられた任務だった。
裏の情報でボンゴレと敵対するファミリーが10代目候補を抹殺する計画を立てていると聞き、ヴァリアーが動いたのだ。
 
独立暗殺部隊とはいえボンゴレはボンゴレ。次期ボス候補がいないとあっては他のファミリーとの関係や、内部の後継者争いでボンゴレは混乱してしまうだろう。
そればかりはヴァリアーも困るのだ。
ザンザスも後々面倒になるのは嫌なのか、何よりもこの任務を優先させた。
そしてスクアーロが日本へ飛んだすぐ後に、ザンザスやヴァリアー幹部もそれに続いた。
 
だが、スクアーロが来た時にはもう遅かった。
いや、任務は沢田綱吉の保護だったのだが、それでもあの歳はまだ母親が必要だろう。特に日本人は1人立ちが遅いと聞いた。
 
 
 
沢田家に入った時には、沢田奈々の死体の前で沢田綱吉が呆然としていた。
気の利いた言葉ひとつかけてやれなかった。
そして自分が敵ではないとわかるとフッと気を失った。
こんな弱っちい奴が次期ボンゴレのボスかと思うと幸先が不安になってきた。
車まで運ぶために抱えてみると、ものすごく軽かった。
そして何か違和感を感じた。
その違和感の正体に気づいた時、思わず1人で叫んでしまった程だった。
 
 



 
 
 
「う"お"お"お"い、入るぜぇ」
 
一応ノックの後に声をかけてから入る。
前に一度急いでいていきなりドアを開けたら、ものすごい速さで花瓶が飛んできたからだ。
 
 
「・・・沢田綱吉はどうした」
 
こちらを見ずに書類に目を通しながら言うヴァリアーボス、ザンザス。
これでも戦闘だけでなく頭もきれるのだ。
本人のやる気とボンゴレの血があったら、こいつが10代目でいいのにと誰もが言っていたのを思い出す。
 
 
「一応医務室に寝かせてある。気を失ったんでな、起きるまで待つしかねぇ」
 
「そうか」
 
短く返事をすると、ザンザスは次の書類へ目を向けた。
 
 
「・・・・・・」
 
報告を終えても部屋を出ようとしないスクアーロを不審に思い、ザンザスはまだ何か用かという目を向ける。
 
 
「あ”〜〜・・・ボス」
 
「何だ、さっさと言え」
 
「・・・沢田綱吉の母親なんだが・・・間に合わなかった。それと父親の門外顧問は未だ行方不明だぁ」
 
「・・・そうか」
 
だがまだスクアーロは何か言いたそうだった。
 
 
「・・・おい、言う事は一気に言いやがれ」
 
そろそろイライラしてきたザンザス。
それを察してか、スクアーロも覚悟を決める。
 
 
「ボス・・・沢田綱吉について調べたかぁ?」
 
「あ?・・・あぁ、大体はな。初代の血を引く門外顧問の1人息子だろ」
 
 
「それがなぁ・・・違ったんだぁ」
 
「何?」
 
ザンザスがようやく書類から目を離してスクアーロを見る。
眉間の皺が増えていた。
 
 
「何が違ったんだ」
 
「あ”〜〜〜・・・」
 
どうにも言いにくそうなスクアーロ。
それにキレかけたザンザスは懐から拳銃を取り出し「あと10秒以内に言え」と軽く脅した。
 
「う"お"お"お"い!!ちょっと待てぇ!!言うからそれ下ろせぇ!!」
 
チッと舌打ちし、ザンザスはしぶしぶ拳銃を下ろす。
 
 
 
「・・・娘だった」
 
 
「は?」
 
 
いきなりぽつりと言ったスクアーロの言葉の意味がわからず、思わず聞き返す。
 
 
「沢田綱吉は門外顧問の1人娘だったんだぁ」
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
―――――――――――――――――――――
半端です。
ちょっと直しました。
2007.9.24
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