小説1
□俺と私と10代目
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家に帰ったら、全てが変わっていた―――
俺は沢田綱吉。並盛中学に通う2年生だ。
勉強も運動もダメダメな事から、学校ではダメツナと呼ばれている。
でも実際、そこまで勉強が出来ない訳ではない・・・と思う。授業中にあてられて答えられない時が多いのでみんなからはそう思われがちだが、テストはいつも平均はとっている。ただ、苦手な科目の先生が何故か俺にばかり難しい問題をあてるので答えられないだけなのだ。
運動も、体力がないためまずみんなについていけないだけであって、全く出来ない訳ではない。でも、ある理由で水泳だけは見学させてもらっている。別に泳げない訳ではないが、周りは俺が泳げないからいつも見学しているのだと思っているらしい。まぁ、それならそれで構わないが。
でも、最近では少しずつ友達も出来た。
イタリアから来た獄寺君。何故か俺の事を10代目と呼ぶ。
それに野球部の山本。すごくいい奴で、頼りになる存在だ。
それから学校のアイドルの京子ちゃん。ちょっと天然だけど優しくて可愛い。
そして京子ちゃんのお兄さんの了平さん。人の話を聞かないところはあるが、京子ちゃんと同じく根はすごく優しくていい人だ。
後は学校の帰りにちょっとした事があって何故か好かれたハル。彼女は隣の緑山中だ。
嬉しい事にまだいるが、普段よく話す人達はこのくらいだ。
みんないい人で、みんな大好きだ。
そんな感じで、俺はたぶん今すごく幸せなのだろう。これが日常になっているのでそう思う事はあまりないが。
だから、この幸せがある日突然壊れるなんて、思ってもいなかった。
いつものように獄寺君と下校する。山本は部活だ。
家の前で別れ、彼の背中を見送る。
そして家に入ろうとした。
だが、何故か嫌な予感がしたのだ。なんの確証がある訳でもないが、本当にただなんとなく、先に進んではいけない気がした。
自分の家なのに変な話だ。
家には今は母さんがいるはずだ。
とりあえずこんな家の前で考えていても仕方がない。
ドアを開けて家の中に入った。
「ただいま〜」
いつもなら「おかえりツッ君〜」と奥から聞こえてくるはずなのに、今日はそれがない。
鍵は開いていたから家にはいるのだろう。
「・・・・・・?」
変だ。
しかも、なんか異臭がする。
こう・・・なんというか、今までに嗅いだ事はないけど、すごく嫌な臭い。
「母さん?」
返事がないので、自分の部屋に行く前に居間に向かった。何だか、だんだん異臭が強くなっている気がする。
そして居間に顔を出した瞬間―――
「・・・・・・・・・っ」
声が出なかった。
一瞬何が何だかわからなかった。
でも、次の瞬間には両目から涙がとめどなく溢れて頬をつたっていた。
足を動かそうとするが動かない。
肩から鞄が落ちたが、それを拾う余裕はなかった。
「か・・・かあ・・・さん・・・・・・?」
やっと出た言葉がそれだった。
だがそれに対しての応答はない。
当たり前だ。
だって母さんは・・・
床に血まみれになって倒れていたのだから―――
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続きます。今回は暗いですが、だんだん明るくなります。
2007.9.15