小説1

□俺と私と10代目
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8年後。
 
「ボス、報告書です」
 
「ありがと。お疲れ様、ザンザス」
 
「いいえ」
 
綱吉はすっかりボスらしくなった。
見た目はあまり変わっていないが、それでもだいぶ大人っぽくなってきている。
 
報告書を確認すると、机の上に無造作に置いた。
そして未だ頭を下げているザンザスへと向き直る。
 
「もういいよ、ザンザス」
 
「・・・綱吉」
 
どちらともなく抱き合い、キスをする。
1ヶ月の遠征なんてよくある事だが、やっぱり寂しい。
その時間を埋めるように触れ合い、愛し合う。
彼女の顔は、ボスから普通の女性に戻っていた。
 
 
「そっちもずいぶんと忙しいらしいな」
 
「まぁね」
 
彼女がボスになり、マフィア界はだいぶ変わった。
まず、綱吉は民間人への被害の最小化を図った。
マフィア同士ならば仕方がない。
それは今までいろんなものを見てきてそう思った。
みんな何かしら覚悟があってこの世界に入ったのだ。
だが、一般人は違う。
巻き込まれて命を落としていいはずがない。
 
それから綱吉は、マフィアを取り仕切る直属の部下を設けた。
街で暴れるマフィアを抑えるマフィアだ。
これが民間の間で噂になり、穏健派のマフィアも沢山同盟に入ってきた。
 
ボンゴレは10代目の代でだいぶ変わり、拡大した。
 
 
 
 
「おまえなら何かをやらかすと思っていたが、まさかここまでやるとはな・・・」
 
「見直した?」
 
「いや、惚れ直した」
 
相変わらず直球でくるから困る。
綱吉は真っ赤になりながら、恋人の胸に顔をうずめた。
 
 
 
 
 
ボンゴレ内で1番綺麗な庭には、母である奈々の墓が置かれている。
家光も、ここへくる度に花を添えていった。
 
 
綱吉はいつものようにそこへ行く。
今日は母親の命日だった。
 
母のような明るく綺麗な花をそっと添える。
 
 
 
 
 
母さん
 
私、今とっても幸せよ
 
 
守ってあげられなくてごめんね
 
 
でも、もう大切な人達を失うことはしたくないの
 
 
 
この先何が起こるかわからないけれど
 
どうか見守っていて
 
 
 
 
 
ざぁぁ・・・と優しい風が通り抜ける。
 
 
綱吉はそこに、母の姿を見た気がした。
 
 
自然と涙が溢れる。
 
もう泣かないと決めていたけれど、今日くらいは許してほしい。
 
 
 
 
母さん
 
 
ありがとう
 
 
母さんの笑顔は一生忘れない
 
 
 
私、ボンゴレの10代目として頑張るよ
 
 
 
大切な人達を守っていく
 
裏の世界に関わってはいけない人達を
 
自分のファミリーを
 
仲間を
 
そして恋人を
 
 
 
 
 
 
 
その後、ボンゴレ10代目沢田綱吉の功績は後世まで語り継がれてゆく・・・・・・
 
 
 
 
 


→後書き
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