小説1

□俺と私と10代目
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次の日。
綱吉はヴァリアーボスと幹部・・・つまりザンザスとスクアーロ、ベル、ルッスーリア、マーモン、レヴィを呼び出した。
昨日の着替えを見たからかザンザスは居づらそうに顔を背けていたが、そんな彼の行動が綱吉をさらに不安にさせていた。
 
 
「ツナちゃん、一体どうしたのぉ?」
 
ルッスーリアがエプロン姿でそう尋ねる。
どうやらお菓子作りの途中だったらしい。
 
「ごめんなさい、みんな。でもどうしても言っておきたい事があって」
 
その場にオレガノはいなかった。
彼女は一緒についていると言ったのだが、綱吉がそれを断ったのだ。
いつまでも甘えている訳にはいかない。
 
 
「俺は10代目になるって決めた、それは変わらないです。ただ、みんなに黙っていた事があるんです」
 
綱吉はスウッと息を吸い、覚悟を決めて言った。
 
 
 
「俺・・・いいえ、私は女なんです」
 
 
 
 
言った。
ついに言ってしまった。
 
綱吉は恐る恐るみんなを見渡す。
だが、驚いているのはレヴィだけだった。
 
 
「10代目ボスが女・・・・・・」
 
「あらレヴィ、知らなかったの?」
 
するとベルがルッスーリアを見る。
 
「オカマこそ、知ってたんだ」
 
「えぇ、とっくの昔にね。そういうベルちゃんこそ」
 
「そりゃわかるよ。あれだけいっぱい一緒に遊んだし」
 
「ってことは知らなかったのはレヴィだけって事かぁ」
 
 
そんな会話の中、ある意味綱吉が1番驚いていた。
 
 
「え・・・?みんな、知って・・・・・・?」
 
「えぇ、最初にツナちゃんに抱きついた時に」
 
「王子は王子だから」
 
「僕は綱吉に抱き上げられた時かな」
 
「俺は医者の話を聞いたからなぁ」
 
「・・・・・・カスから聞いていた」
 
 
「え・・・えぇ〜〜〜〜〜???!!!」
 
 
綱吉は力が抜けてその場にへたり込んでしまった。
 
「今までの悩みは一体・・・・・・」
 
あれだけ悩んで、やっと言おうと決心したというのに。
 
 
「あれ?って事は、みんな、私が女でも10代目として認めてくれたって事・・・?」
 
するとみんな頷く。
 
当たり前だ。
ボスとは性別で決まるものではない。
ほとんどは血で決まるが、1番大事なのはそんな事ではない。
 
彼女がボスになれば、この世界は変わるのではないか・・・いや、変えてくれるのではないか。
みんな、それを見てみたかったのだ。
綱吉には何か大きな力がある。
 
 
 
 
「ツナちゃん、私達は全員貴女の見方よ」
 
「そうだよ。王子が従うなんて滅多にないんだからね」
 
「僕は研究と同じくらい綱吉のために働くよ」
 
「ボスのボスのためならば・・・」
 
「この道は甘くはねぇぞぉ?」
 
「っはい!!」
 
綱吉は微笑んだ。
だが、その瞳からは涙が溢れ出していた。
 
悲しいのではない。
嬉しいのだ。
 
自分にはこんなに素晴らしい仲間がいる。
何を迷う事があるのか。
ただひたすら、この人達を守っていこう。
 
ボンゴレ10代目になって・・・・・・。
 
 
 
 
綱吉は先程から黙っているザンザスを見る。
ずっと前から知っていたと言っていたが、もしかしてやっぱり女には任せられないとか言うのではないか・・・。
 
だが次の瞬間、ザンザスは綱吉の前まで歩み寄り、その身体を抱きしめた。
 
「っ???!!!」
 
突然の事に戸惑うばかりの綱吉。
周囲ではベルの笑い声やルッスーリアの黄色い声が聞こえる。
 
「ザザ、ザンザスさん?!」
 
「俺はおまえの部下だ」
 
「は、はい・・・?」
 
とりあえず頷く。
 
「だが、それは仕事での事だ」
 
「はぁ・・・」
 
「仕事以外では、俺を恋人として見てほしい」
 
「は・・・・・・・・・えぇぇぇ??!!こっ・・・??!!」
 
 
実はあれから悩んでいたザンザス。
自分の気持ちに気づいたはいいが、どうしていいかわからなかった。
そこで、直球勝負に出たのだ。
下手な小細工や遠回しな言い方では性に合わないと思ったのだ。
 
最悪嫌われる事も覚悟していた綱吉は、また涙を流す。
先程と同じ喜びの涙。
でも、少し違う涙。
 
 
 
「私・・・貴方を好きになってもいいですか・・・?」
 
「カスが。俺はとっくにおまえに惚れてる」
 
 
それから、また強く抱き合う。
 
 
 
完全に無視された幹部達は、苦笑しながら自室へと戻って行くのだった。
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
――――――――――――――――――――
久々で申し訳ないです。
次で最後です。
2008.05.01
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