小説1

□俺と私と10代目
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10代目になると決めてからは、少しずつだがイタリア語やマフィアについての勉強を始めた。
ただ、やはり1人で勉強するには限界がある。
なのでたまにオレガノやヴァリアーが交代で面倒を見ていた。
 
そして今日は誰かと待っていると、なんとスクアーロだった。
 
 
「よぉ」
 
「スクアーロ・・・・・・久しぶり・・・です?」
 
「敬語はよせ。テメェはボンゴレのトップに立つんだろ」
 
「・・・うん」
 
そうだ。
自分はマフィアのボスになるのだ。
そう決めたのだ。
 
 
「・・・あんま無理すんなよぉ?」
 
「ありがと。でも大丈夫、みんないるし、ザンザスさんも守ってくれるって言ってくれたから」
 
「・・・・・・ボスが、かぁ?」
 
「うんっ」
 
 
そんなまさか。
あの他人を虫けらのように扱うザンザスが他人を守る?
・・・・・・これはまさか綱吉に惚れたかぁ?
 
ザンザスに恋・・・・・・そんなありえない組み合わせに気が遠くなるのを感じたスクアーロだった。
 
 
 
 
 
 
 
それから数日後、今日はオレガノが来る約束なので、綱吉は部屋の鍵を開けておいた。
いつもは念のため閉めておけと言われるのだが、最近では開けている事が多い。
 
少し寝坊をしてしまったため、慌てて着替える。
その途中、ドアをノックする音が聞こえた。
着替え中だったが、もちろんオレガノだと思っていたので「どうぞ」と言った。
 
だが、入ってきたのは予想していた人物ではなかった。
 
 
「綱吉、この前教えたこれなんだ・・・が・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 
 
なんと、入ってきたのはザンザスだった。
 
双方、しばらく固まる。
綱吉はサラシを巻いている途中だった。
 
 
 
「きっ・・・・・・きゃああぁぁあぁぁ〜〜〜〜〜!!!!」
 
 
「悪かった!!」
 
 
ザンザスは慌ててドアを閉める。
それから廊下の壁を背にしゃがみ込んだ。
 
 
いや、女だというのはわかっていた。
だがまさかああもタイミング良く・・・いや悪く見てしまうとは・・・。
 
 
そこへオレガノがやってきた。
初めて見るヴァリアーボスのしゃがみ込み。
 
「・・・ザンザス?貴方何してるの?」
 
「・・・・・・何でもない・・・」
 
「そう・・・」
 
そしてオレガノが部屋へ入っていく。
案の定、彼女に抱きついて泣きじゃくる綱吉の声が聞こえてきた。
 
 
 
 
 
「・・・・・・何やってんだ俺は・・・・・・」
 
というかおかしいだろ。
あんなものでこんなに顔が赤く火照るなんて・・・・・・。
 
 
ザンザスに、初恋の相手の着替えは少々刺激が強すぎたらしい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
一方部屋の中の綱吉は、サラシを巻ききれていない状態でオレガノに抱きついてわんわん泣き始めた。
 
「お嬢様?!」
 
それからすぐにピンとくる。
 
「ザンザス・・・・・・」
 
指の骨をパキパキと鳴らして低音でそう呟くオレガノに綱吉はハッとする。
そして慌てて誤解を解いた。
 
「あの、私が悪いんですっ。オレガノさんだと思って着替え中だったけど入っていいって言っちゃって・・・・・・だからザンザスさんは何も悪くないんです!!」
 
「この姿を見られて・・・あんな奴に・・・・・・」
 
「あの、オレガノさん?」
 
「・・・お嬢様!!」
 
「はいぃ?!」
 
肩をガシッと掴まれて思わず声が上擦る。
 
「見られたからにはお嬢様は被害者です!!そしてあの男は立派な犯罪者!!」
 
「そんな大袈裟な・・・大体私なんかの着替えを見たところで・・・・・・・・・あぁ―――――っ!!!!」
 
そこで気づく。
この姿を見られたという事は、つまりは女だとバレたという事で・・・・・・。
 
 
「お嬢様?」
 
「どうしようオレガノさん!!」
 
今度は逆に綱吉がオレガノの肩を掴んだ。
 
「私が女だってバレちゃったかも!!・・・あ、でももしかしたら大丈夫かな・・・私スタイル良くないし女っぽい体つきしてないし・・・」
 
「何を言ってるんですか!!」
 
またまたオレガノが詰め寄る。
 
「お嬢様はこれ以上ないくらいスタイル抜群です!!脚は綺麗で胸は形がよく大きさも程よくて色は透き通るように白い、そして何よりこんなに可愛い顔をお持ちなんですから、もっと自身を持って下さい!!」
 
そうたたみかけた。
それから落ち着きを取り戻すように深呼吸をする。
 
綱吉は、彼女のこういう所がいつもとギャップがあっていいと思うし好きだった。
 
「・・・でも、もし女だってわかったらボンゴレ10代目をやめろって言われたり・・・それどころか今まで騙してたから嫌われたりとか・・・・・・」
 
どんどん悪い方向へ考えてしまう。
 
今まで仲の良かったルッスーリアさんやベル、マーモン、少ししか会った事がないけどレヴィ、そしてスクアーロ・・・彼らに嫌われてしまったらと思うとすごく嫌だ。
それとザンザスさん・・・・・・あんなに一生懸命に相談に乗ってくれたり守ると言ってくれたりしたのは、きっと自分が男だからだ。
それが女だと知ったら・・・・・・・・・きっと幻滅される。
騙されたと怒られる。
・・・嫌われてしまう。
 
 
「オレガノさ〜〜〜んっ!!」
 
綱吉はオレガノに抱きついた。
 
「私、ここにいたいです、みんなと一緒にいたいですっ・・・オレガノさんと・・・ルッスーリアと、ベルと、マーモンと、レヴィと、スクアーロと・・・・・・ザンザスさんと一緒にいたいです〜〜!!」
 
「お嬢様・・・」
 
「嫌われても仕方ないですけどっ・・・それでも、一緒にいたいんです・・・」
 
 
みんな大好きになっていた。
 
すごく大切な人達になっていた。
 
そんなみんなを、守りたいと思った。
 
今度こそ、必ず・・・・・・。
 
 
 
 
オレガノは、そんな幼い次期マフィアのボスを抱きしめる。
 
 
本当はこんな道を歩ませたくない。
 
きっと誰よりもこの裏の世界には似合わない人間だ。
 
だけれど、もう彼女しかいない。
 
ボンゴレの血などなくても、もうとっくにみんな彼女を気に入っている。
 
傍にいてほしいと思っている。
 
もちろん、自分も・・・。
 
 
 
 
 
「お嬢様」
 
オレガノは優しく呼びかける。
 
「大丈夫です、誰もお嬢様を嫌いになんてなりませんよ。もしそうなったとしても、私だけは貴女の見方です。だからもう泣かないで下さい」
 
「オレガノさん・・・」
 
綱吉は涙でぐちゃぐちゃの顔を上げる。
 
「ほら、早く着替えなくては。それではお寒いでしょう。それからまた考えましょう」
 
「・・・はい」
 
そういえば、まだサラシの巻き途中。
手伝ってもらいながらなんとか着替え、綱吉はこれからの事を考える。
 
まずは謝らなくてはいけないだろう。
ずっと騙していたのだから。
 
それから10代目の事。
これまでも女性のボスはいたらしいのだが、やはり男性の方が圧倒的に多いし、みんなもそれを期待しているはず。
 
 
「あまり考えすぎないで下さい、お嬢様。微力ながら私もついていますので」
 
「オレガノさん・・・はいっ、ありがとうございます。頼りにしてますね」
 
 
彼女がいて良かった・・・心からそう思った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
――――――――――――――――――――
ついにこの時が・・・。
ザンザスがウブでキモいですね。
2008.03.17
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