小説1

□Cenerentola
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平和な日曜。
基本的に隼人も恭弥も、日曜に仕事はない。
だから綱吉は家族みんなでのんびり出来るこの時間が大好きだった。
 
 
「隼人姉、恭弥姉、母さん、紅茶淹れたよ」
 
「ありがとうございますっ」
 
「ありがと、綱吉」
 
「ありがとう」
 
綱吉の淹れた最高の紅茶を飲みながら、他愛無い話をしたり隼人と恭弥が買ってきたお土産を広げたりと、家族団らんを満喫していた。
 
その時、玄関のベルが鳴る。
ディーノが応対へ向かった。
 
 
「誰かが訪ねてくるなんて珍しいね」
 
綱吉の台詞に、姉2人も頷く。
 
「どうせ勧誘か郵便でしょ。基本仕事関係の奴は来させないようにしてるしね」
 
「もし変な奴だったら果たしてきますよ、綱吉様!」
 
「う、うん…程々にね…」
 
実は綱吉、あまり外出させてもらえない。
それはもちろん、姉2人が彼女を可愛がりすぎて外に出したくないから。
ディーノも、ドジな自分を棚に上げて綱吉を心配する。
 
 
 
ディーノが部屋を出て数分後。
廊下から走ってくる音が聞こえてきた。
そして次の瞬間、ビターン!とコケる音も。
 
隼人と恭弥はため息をつき、綱吉は慌てて廊下へ向かった。
そしてディーノがおでこに擦り傷を作って入って来る。
迎えたのは、冷ややかな子供2人と呆れた空気だった。
 
「また転んだの?あれ程廊下は走るなって言ったのに……いい加減学びなよ」
 
「ちょ、ちょっと慌てちゃって…」
 
そう言うディーノの手には、手紙のようなものが。
 
「もしかしてそれか?」
 
綱吉の前では敬語でも、何故か姉と母にはぶっきらぼうな隼人。
当然態度も違う。
 
「そう、コレ!大変だよみんな!早く支度……あぁぁあぁでも最近そんなのなかったし……どうしようっ」
 
「いいから、落ち着いて話して」
 
どっちが親だかわからないディーノと雲雀のやり取りに苦笑しながら、綱吉は落ち着くハーブディーを淹れに行くのだった。
 
 
 
戻ると、グチグチと説教をされたのか、ディーノが椅子に座り小さくなっていた。
とても2人を生んだ母親とは思えない。
 
「と、とりあえずこれ飲んで……母さん、結局さっきのは何だったの?」
 
「あ、そうそうっ」
 
4人が席につくと、ディーノが手紙をテーブルの上に置いた。
 
「さっき、お城の使いの人が来てね、これを渡していったの」
 
「で?中身は何?」
 
「……明日、お城でパーティーがあるらしいんだ」
 
「「「パーティー?」」」
 
「しかも年頃の若い女性は全員参加するように、と」
 
「年頃の……」
 
隼人と恭弥は顔を見合わせ、同時に言った。
 
「「この家には関係ないね」」
 
「特に14歳から20歳の娘は必ず、とあるんだけど…」
 
「「……………」」
 
隼人と恭弥はあからさまに嫌そうな顔をする。
2人はパーティーになど興味はない。
特に恭弥は人混みが嫌いだし、隼人も社交辞令だなんだと面倒臭いのが好きではなかった。
 
 
 
「これって…私も行けるの…?」
 
ハッとして見れば、綱吉が目を輝かせていた。
 
「つ、綱吉、君にはまだ早いよ」
 
「そうですっ、それにパーティーなんて面白いもんでもないですよ!」
 
だが2人の本音は違っていた。
確か国王の息子、王子は今24歳。
妻はいないと聞く。
そろそろ結婚を考えてもいい年頃だろう。
というか多分遅いくらいだ。
そしてそのタイミングでいきなりのパーティー。
しかも若い女性は必ず。
これはもう、結婚相手を探す場としてパーティーを開くに違いない。
 
そんな場に可愛い可愛い妹、綱吉を行かせる訳には絶対にいかない!
こんな時だけ、隼人と恭弥の意見は一致するのだった。
 
 
 
「母さん…パーティー行っちゃダメ?」
 
「もちろんいいに決まって……」
 
その時、ディーノは確かに実の娘2人からの殺気を感じた。
振り向けない程に、背中に殺気がドスドス刺さってくる。
 
「お…お姉ちゃん2人に聞いてみたらどうかな…?」
 
やっとしぼり出した言葉が、それだった。
 
 
「隼人姉、恭弥姉……」
 
捨てられた仔犬のような目で見られて内心グラッとしながらも、それでも姉2人は首を横に振った。
 
「ダメなものはダメだよ」
 
「そうです。これは貴方のためなんですよ」
 
「私の…ため……?」
 
「「そう!」」
 
大好きな姉2人にそんな事を言われては、綱吉も駄々をこねられない。
結局、おとなしく頷いたのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
一方、城では。
 
「あんのクソジジィ、帰ってきたと思ったら勝手にパーティーなんぞ決めやがって……ハッ、ふざけんじゃねーよ。誰があの老いぼれの言う事なんて聞くかってんだ」
 
そんな愚痴をこぼすのは、王子のザンザス。
ボンゴレ9代目国王ティモッテオの息子だ。
見た目は王子とは呼べないような、強面で目つきは最悪、ガラも悪く態度も悪い。
 
「そう言うなぁ。明日はおまえの帰国パーティーだろぉ?」
 
「んなの建前だっつーのはわかってんだよ。年頃の女は絶対参加?魂胆が見え見えなんだよ!」
 
「まぁ…9代目は早く孫の顔が見たいんだろうよぉ」
 
「うるせぇ!ドカスが!」
 
「う"お"っ!!」
 
ザンザスによって顔を壁にめり込まされたのは、従者のスクアーロ。
銀色の長い髪に鋭い目つき、まぁザンザスと同じくガラも態度も悪い。
いつもいつも、理不尽に王子の我が侭やストレス発散につき合わされていた。
 
 
 
「……でも、ホントにさっさと結婚しちまわねーと、9代目がもっとうるさくなるぜぇ」
 
「この俺に見合う女が何処にいる?カスしかいねーだろ」
 
「それを今回確かめるんだろーがぁ」
 
「興味ねーな。結婚も別にしなくて構わねーし」
 
スクアーロはため息をつく。
どうしてこう、この王子は面倒臭いのか。
仕事はそれなりにやるし、結果もいい。
剣だって賭けだって強い。
だが、どうにもやる気がなかった。
というか執着というものがこの男にはないようだ。
何事にもそつなくこなすが、興味は示さない。
どんな美女が迫ろうと、顔色1つ変えない。
ともすれば、彼から結婚相手を選ばせるなど不可能だ。
 
 
「はあ"ぁぁぁ……」
 
とにかく、子供が出来なければ跡継ぎの問題もややこしくなる。
国王は絶対に王子を結婚させる気だ。
 
頭が痛くなるスクアーロだった。
 
 
 
 
 
そして国王はというと、この先出来るであろう孫を想像して顔を緩めていた。
 
「あ〜…早く孫の顔が見たいもんじゃの〜」
 
そこへ大量の書類が。
 
「仕事して下さい、9代目」
 
侯爵である家光が冷たく言い放つ。
彼も、国王の我が侭の被害者であるのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2009.04.08
 
 
 
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