小説1

□Cenerentola
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あるところに、それは可愛らしい少女が住んでおりました。
彼女の父は妻を早くに亡くし、娘に母がいた方がいいだろうと考え再婚しました。
再婚した妻は娘を2人連れていました。
しかしすぐに父は病気でこの世を去ってしまったのです。
 
 
 
 
 
朝日が眩しい。
 
「…………ん…?」
 
綱吉は目を擦った。
 
 
「朝デス!起きて下サイ!」
 
くちばしでカーテンを開けるのは、早起きで規則正しい鳥、イーピン。
続いてバジルとフゥ太も出てきて、部屋のカーテンを全開にした。
 
3匹の鳥達は綱吉の頭上を鳴きながら飛び回る。
そうしていつも起こしているのだ。
 
 
「ん〜……わかったわかった、起きるよ」
 
そして綱吉が起きると、続いて先程の鳥の鳴き声でネズミ達も起きて来る。
 
 
「相変わらずうるせぇ…」
 
低血圧らしいリボーン。
その後ろからコロネロとラルとスカルも出てきた。
 
 
綱吉は伸びをすると、笑顔でみんなに朝の挨拶をする。
 
「おはよう、イーピン、バジル、フゥ太。それにリボーン、コロネロ、ラル、スカルも」
 
それから「あれ?」と辺りを見回す。
 
「マーモンは?まだ寝てるの?」
 
少し年下なマーモンは、まだ夢の中のようだ。
 
 
「おいスカル、マーモンを起こしてこい」
 
「何で俺?!」
 
リボーンの命令に近い言葉に不満を漏らすスカル。
いつもいつもこうなのだ。
ちょっと後から来たからってこれはないだろう。
 
「鍛え方が足りねぇか?コラ!」
 
「い、行ってきます!!」
 
コロネロの睨みで、スカルは奥へマーモンを起こしに行くのだった。
 
 
「みんな、あんまりスカルを苛めちゃダメだよ?」
 
「綱吉、今のは苛めじゃなくてしつけっていうんだぜ」
 
ラルが言い切る。
こんな口調だが立派な女の子だ。
 
 
 
「さてとっ……今日も頑張ろっと!」
 
起きてきたマーモンにも挨拶をすると、綱吉は身支度を始めた。
女の子達も手伝う。
 
そしてすぐに部屋を出て行った。
 
 
目的地は庭。
 
 
 
 
「おはよう、武」
 
「お、ツナ。おはよーさん」
 
放し飼いの犬である武はすでに起きていて、庭を走り回っていた。
さすが、体力は底なしだ。
 
「武、ベルを見なかった?」
 
「ん?馬小屋の方に行ったぜ」
 
 
 
そして馬小屋へ行くと………猫が馬に乗って遊んでいた。
 
「こらベル!ランボが困ってるでしょ?」
 
するとベルはおとなしくランボから降りる。
 
「だって暇だったから」
 
「だからって……ほらランボも、嫌だったらちゃんと言うんだよ?」
 
「い…言ったもん……」
 
そんないつもの光景に苦笑すると、綱吉は木の囲いを外した。
囲いを自分で飛び越える事も出来るので、要は意味がないのだ。
ただなんとなく形としてあるだけで、馬のランボも放し飼いのようなものだった。
もちろん猫のベルも。
 
 
「ベル、ランボ、おはよう」
 
改めて挨拶すると、2匹からも笑顔で挨拶が返ってきた。
 
 
 
 
そしてみんなに朝食を配ると、綱吉は今度は母と姉の朝食の支度を始める。
紅茶を淹れて、トーストを焼いて、この2つが出来上がるまでにみんなを起こしに行くのが日課だ。
 
 
 
 
――コンコン
 
「隼人姉?」
 
するとベッドの上で布団がもぞもぞと動く。
そして眠っていた人物がガバッと起き上がった。
 
「綱吉様?!あぁぁあぁっ!!また綱吉様に起こされてしまった!今日こそはと思ったのにぃ!!」
 
そう言って頭を抱える隼人。
次女である彼女は、とある研究所で働いている。
父が亡くなったとはいえ、家計はまだまだ余裕もある。
だが少しでもお金はあった方がいいと、まだ若いながらバリバリに働いているのだ。
 
 
綱吉は苦笑して部屋のカーテンを開けた。
 
「仕方ないよ。隼人姉、昨日も夜遅かったんでしょ?お仕事お疲れ様」
 
「綱吉様にそんな事言われると……っ自分感動して泣いてしまいます…」
 
そして本当にぐずぐずと泣き出す。
相変わらず変わった姉だ。
しかも妹に向かって敬語だし、様付けだ。
 
 
「じゃあ隼人姉、もうちょっとで朝食出来るからね」
 
「ぐずっ…ありがとうございます…」
 
 
そして綱吉は、次なる部屋へ向かった。
 
 
 
 
――コンコン
 
「恭弥姉?」
 
ベッドに近づいてみると、彼女はすでに目を覚ましていた。
 
「おはよう、綱吉」
 
「おはよう、恭弥姉。もうっ、目が覚めてるなら自分で起きて来てよっ」
 
すると恭弥はフッと笑い、その綺麗な切れ長の目を細めて言った。
 
「綱吉が起こしに来なきゃ、朝が始まらないだろう?」
 
「全く、恭弥姉ったら……」
 
実は彼女も仕事をしているのだが、その内容は妹の綱吉にも謎なのだ。
前に聞いた事があったが、見事にはぐらかされてしまった。
それからはあまり聞かないようにしている。
 
 
「綱吉、最近ネズミがこの家で群れてるみたいだけど……ネズミ捕りでも置くかい?」
 
「そっ……それは大丈夫ですっ!ちゃんと掃除もしますからっ」
 
実は、ネズミ達と友達なのはこの家で綱吉だけだ。
そして犬や猫と話せるのも綱吉だけ。
 
恭弥姉に見つかって退治されないように注意しとかなきゃ…そう思いながら次なる部屋へ向かう綱吉だった。
 
 
 
 
――コンコン
 
「母さん?」
 
呼ぶが、返事が返ってこない。
まだ眠っているようだ。
 
綱吉は中へ入り、カーテンを少しだけ開ける。
するとそこから漏れる朝の光で、母であるディーノの金髪がキラキラ輝いていた。
いつ見ても綺麗だと思う。
 
 
「ん〜……ツナ…?」
 
「おはよう、母さん。もう朝だよ」
 
「あ〜……うん、おはよ」
 
ディーノは目を擦りながら起き上がり、ベッドから降りた。
だがその時。
 
「う、おっ?!」
 
自分のパジャマの裾を踏み、盛大にコケた。
 
「母さん?!大丈夫?!」
 
「だ、大丈夫大丈夫…」
 
笑いながら床にぶつけたおでこを抑えるディーノ。
実は彼女、三人の母親でありながら全くのドジなのだ。
今のように転ぶのはしょっちゅう、家事をやらせれば酷い有り様になる。
だからこそ、綱吉が家事全般を引き受けているのだ。
母親を早くに亡くした綱吉は、基本的な家事はこなせていたのであまり苦はなかったのだが。
 
だが、ディーノは綱吉の事を我が子同然に可愛がった。
いや、もしかしたら実の子以上に可愛がっているかもしれない。
何より優しいのだ。
 
 
「じゃあ母さん、下で待ってるからね」
 
「うん、ありがとね」
 
ディーノは笑って綱吉を見送った。
 
 
 
実は綱吉は、実の母親の記憶がほとんどない。
ものすごく幼い時に亡くなってしまったため、父親から聞いた話と写真でしか知らないのだ。
だから彼女の母親は、ディーノだった。
 
出会ったのは綱吉が10歳の時。
最初はどう接したらいいのかわからなかったが、父親の選んだ人なら悪い人ではないだろうと思っていたし、実際ものすごく優しかった。
遠慮がちだった綱吉に笑いかけ、名前を呼び、抱きしめてくれた。
その時、初めて母親のぬくもりを知った気がした。
 
 
 
 
 
台所へ戻ると、紅茶のいい香りが漂っていた。
トーストもいい具合に焼けている。
 
 
「ワオ、今日もいい香りだね。さすが綱吉」
 
「さすがです!尊敬します!!」
 
恭弥と隼人が着替えて席についた。
ディーノも少し遅れて席につく。
 
 
「「「「いただきます!」」」」
 
 
こうして、1日が始まるのだった。
 
 

 
 
 
 
 
2009.03.23
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