小説1

□Neve Bianco
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綱吉が小人達に拾われて、もう3ヶ月がたっていた。
皆彼を慕い、綱吉も彼らを慕っていた。
 
 
「綱吉〜、今日はニンジンとジャガイモが大量だよ〜」
 
「ありがとマーモン。それじゃあ、今日はカレーかな?確かまだタマネギもあったし」
 
すっかりここの生活に慣れた綱吉。
子供ではないとはいえ、小人達は自分より小さい。
となると、何故だか自分がしっかりしなければ、という気分になるのだ。
 
 
最初はなかなか話す事も出来なかった雲雀も、段々と彼の良さに気づき、今ではみんな同様ベッタリである。
 
「綱吉、これ僕がわざわざ採ってきたリンゴ。食べないと咬み殺すよ」
 
「雲雀さん…ありがとうございます。今日のデザートにしましょうか」
 
 
 
ほとんど自給自足の生活。
大変だが、綱吉はとても幸せだった。
とても優しい仲間達。
とても豊かな自然。
 
両親の事はいまでも毎日のように思い出す。
会いたい。
すごく会いたい。
けれど、会えないのはわかっている。
どうか2人で幸せに暮らしてほしい。
せめて、自分は今幸せに暮らしていますと伝えたかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
そしてそれから、なんと7年の月日が流れていた。
綱吉は14歳になり、だいぶ成長した。
といっても母親に似た童顔は相変わらずで、身長も年の割にはあまり大きくならなかった。
 
今日は綱吉の誕生日。
みんなで盛大にお祝いをしていた。
 
 
「本当に、大きくなって……」
 
感動のあまりハンカチで涙を拭うのはオレガノ。
いつも冷静な彼女だが、何故か綱吉が関わると感情がむき出しになるのだった。
 
 
プレゼントといってもこの生活では限られてくる。
オレガノは美味しいアップルタルトを作り、リボーンは手袋を。
ベルは自分のとよく似た王冠をあげ、獄寺は本を、骸はマスクを、マーモンは帽子、雲雀はセーターをあげた。
何気ない物だが、全てに愛が詰まっている。
 
綱吉は満面の笑みでそれらを受け取る。
本当に、ここまでこられたのは彼らのおかげだ。
今まで、勉強はオレガノや獄寺に、運動はベルやリボーンに、礼儀作法は雲雀に、お金の事はマーモンに、雑学は骸に習っていた。
おかげで、年相応の知識と体力はついた…はずだ。
 
 
 
 
 
 
だがそんな平和な生活にも、またもや危険が迫っていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
ボンゴレの城内。
ザンザスは最悪の気分で廊下を歩いていた。
 
原因は先ほどまで会っていた女性。
9台目に突然連れられたかと思えば、着いた先にいたのは若い女性。
どうやら勝手にお見合いの話を進めていたようだ。
だがザンザスにはそんなもの興味がない。
しかもその女、馴れ馴れしくて執拗にベタベタとくっついてくる。
正直吐きそうなほど気持ち悪かった。
強い香水の匂いもそれを倍増させる。
それで我慢出来ず、相手の機嫌を損ねない程度に言い訳を作って帰って来たというわけだ。
 
そこで、そういえばとあの女が言っていた事を思い出す。
確か、世界三大珍物の1つである魔法の鏡が見たいとか言っていた気がする。
それはボンゴレが所有しているが、何十年か前に自分が貰った。
だが7年程前に突然なくなった。
まぁ、大して興味もなかったから別にいいのだが。
 
しかし、気になる。
鏡が消えたのは確か、ボンゴレ10代目に相応しいのは誰かと問うた後。
スクアーロがそいつを殺し、血のついた服の切れ端を持ってきた。
それで満足していたがまさか……… 
 
 
 
ザンザスは城中を調べて鏡を探した。
すると、地下の奥深くにやっと見つけた。
 
それを再び部屋へ運ぶと、まず尋ねる。
 
「鏡、テメェをあそこへ隠したのは誰だ」
 
手にはすでにハンマー。
嘘はつけない。
鏡の精、ルッスーリアはしぶしぶ言った。
 
 
「……貴方の部下、スクアーロよ」
 
 
やはり、と思う。
そしてそれならたぶん、次の質問の答えも予想通りのはずだ。
 
 
「この世で1番、ボンゴレ10代目に相応しいのは誰だ」
 
 
 
「……森の奥に住んでいる沢田綱吉よ」
 
 
 
 
ザンザスはものすごい剣幕で走り出した。
 
 
沢田綱吉は生きていた。
スクアーロ…あいつが殺し損ねるという事があるのだろうか。
死体はバラバラにしたからその服の一部だけを持ってきたと言っていた。
そしてそれから鏡を隠した。
どう考えてもおかしい。
裏切りか…だが、彼のボンゴレに対する忠誠心は確かなもの。
だとしたら……
 
「沢田綱吉に寝返ったか」
 
とにかく尋問するしかない。
そして早く沢田綱吉を殺さなければ。
成長してここに来られたら困る。
 
ザンザスは焦っていたのだ。
自分の居場所がなくなる事に…。
 
 
 
 
 
「おいカス!!」
 
「あ”?何だよ」
 
ちょうど剣を磨いていたスクアーロ。
自分が彼の元に赴く…というか呼ばれる事は多いが、こうして来られるのはかなり珍しい。
 
「テメェ、何故沢田綱吉を生かした」
 
「………鏡を見つけたのかぁ」
 
「あぁ。理由を言え。場合によっちゃ今すぐテメェをかっ消す」
 
スクアーロは剣を置き、ザンザスに向き直った。
 
「……俺は、おまえが10代目でいいと思う」
 
「当たり前だ」
 
「…だから、沢田綱吉は見逃してやってほしい」
 
「何…?」
 
「あいつはただ家族と平和に暮らしたいだけだぁ。きっとここにも来ない。だから……」
 
そこでなんと、スクアーロは手と膝を床につけ、その長い銀髪を擦りつけた。
つまりは、土下座。
 
「何のつもりだ、カス」
 
「…あいつだけは、勘弁してやってほしい。頼む」
 
土下座など、剣士にとっては恥。
いくら上司相手とはいえそれは変わらない。
それでもこうしているのはよほどの事だからだ。
それはザンザスにもわかる。
 
「……駄目だ。あいつの存在が知れれば上層部のジジイ共は無理にでもここへ連れてくるだろう」
 
「……………」
 
「テメェの土下座なんざいらねぇんだよ。何故そこまで沢田綱吉にこだわる」
 
スクアーロは顔を上げ、7年前の事を思い出す。
今でも鮮明に覚えているあの笑顔。
もしかしたらもうないかもしれない、あの笑顔。
ただ唯一、生きているという事が救いだった。
 
「あいつは、おまえにないモンを持っている」
 
「俺にないもの…?」
 
「うまく言えねぇが、俺は奴のおかげで少しだけ変われた気がする」
 
「………………」
 
確かに、彼は7年前と比べるとだいぶおとなしくなった。
噂では残忍さがかなり抜けたと聞く。
 
だが、だから何なのだ。
そんなもの自分には関係ない。
 
 
「…もうテメェには頼まねぇ。処分は覚悟しとけ。とりあえずボンゴレに対する忠誠心はまだあるようだからここには置いておいてやる」
 
「……まさか…」
 
「俺が直々に殺ってやるよ、その沢田綱吉をな」
 
待て、というスクアーロの言葉を無視し、ザンザスは不適な笑みを浮かべて自室へと戻る。
そして鏡に沢田綱吉の居場所を聞きだし、計画を練るのだった。
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
――――――――――――――――――――――――――――――
本当は10歳なんですけど、14歳にしました。
影響されやすいですね…感想もらったら嬉しくて書いちゃいました(ヲイ)
いや、出来る時に進めていきますよ?
ザンツナ要素なくてすみません…。
もうすぐのはず。
2008.05.06
 
 
 
 
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