小説1

□Neve Bianco
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綱吉は森の中を歩き続けた。
3日3晩、休みもせずにひたすら歩いた。
 
じつはあの森はすぐに山へと入っており、奥深くまでどこまでも続いている。
 
だがやはり7歳の体力の限界はすぐにきた。
それでもかなり遠くまで来たはずだ。
綱吉は空腹や疲労と闘いながら、段々重くなる足取りを無理矢理進めた。
 
 
「………………」
 
 
家に帰りたい。
それでも、帰れない。
 
泣きたい。
それでも、泣けない。
 
 
スクアーロはあの花を届けてくれただろうか。
…きっと彼なら大丈夫だ。
 
母さんは喜んでくれただろうか。
心配していないだろうか。
それでも、もうあそこには戻れない。
だって母さんも父さんも大好きだから。
スクアーロから2人の話を聞き、もっと大好きに、もっと誇りに思ったから。
 
スクアーロも、自分を庇ってくれたけど、大丈夫なのだろうか。
とても優しかった彼。
もっと別の出会いをしていたら仲良くなれたかもしれない。
 
 
 
綱吉はとうとうその場に座り込んだ。
とにかく休んでからまた歩こう、そう思い眠ってしまった。
 
 
 
 
 
夜。
綱吉の周りを小さなものが取り囲む。
そして何やらコソコソと話し合い、力を合わせて彼を持ち上げた。
極度の疲労と睡眠不足により深い眠りについてしまった綱吉は、そのまま何処かへと運ばれて行った。
 
 
 
 
 
 
 
「ん………」
 
目を覚ますと、まず眠った時と違う感触に気づいた。
ふわふわしていて、まるで布団のようだ。
眠ったのは確か木の根っこの上。
最後に見たのは鬱蒼と茂った森の木々達。
だが今見えているのは、真っ白い壁…天井だった。
 
 
「……えっ?!」
 
慌てて起き上がる。
するとやはり今自分がいるのは何処かの部屋のベッドの上だった。
 
 
「起きた―――っ」
 
「っ???!!!」
 
突然横から声がして見てみれば、小さい人間がいた。
子供ではない、本当に小さいのだ。
といっても自分の半分以上はあるが。
 
起きた起きたと叫んでいるのは、金髪の男の子。
前髪がかなり長くて、王冠なんてものをしている。
 
 
「あの……」
 
「ん?お腹すいた?」
 
いや、確かにすいたけども、それよりも気になる事が。
 
「ここ、どこですか?俺、あの……」
 
「今みんな来るからね〜」
 
「…………」
 
どうやら彼は質問に答えてくれないらしい。
おとなしくそのみんなとやらを待つ事にした。
 
 
 
しばらくすると、ドアから次々と同じ様な小さな人達が入ってきた。
みんな子供ではないが、やはり小さい。
 
「お目覚めになりましたか。気分はいかがです?」
 
唯一女性であるらしい眼鏡の人がそう聞いてきた。
 
「あ、もう大丈夫です。あのっ、ありがとうございます。助けてくれたんですよね…?」
 
「そうですね、あんな所に1人眠っていては危険です。この辺りには猛獣やなんかもいますから」
 
では、本当に命の恩人と言っても過言ではない。
 
「ありがとうございます。俺、沢田綱吉っていいます」
 
「綱吉様ですか…。私はオレガノ、ここのリーダーのようなものです。そして――…」
 
「俺ベル――っ」
 
先程の金髪の小人がそう言ってはしゃぐ。
 
その彼に隠れるようにしてもじもじしている灰色の髪の小人。
オレガノが気づき、無理矢理彼を引っ張り出した。
 
「ほら、ちゃんと挨拶しなさいっ」
 
「………獄寺…隼人……」
 
それからすぐにピュッと隠れてしまう。
どうやら照れ屋さんみたいだ。
 
そして立っていながらもコクコクと眠そうな目で近寄ってきたのは、全身真っ黒で帽子を被っている赤ん坊だった。
 
「俺はリボーンだぞ…ふあぁあぁぁ〜…」
 
欠伸をして、そのままコテンと寝てしまった。
 
「クフッ!!クフッ!!……クハッ!!」
 
ものすごく変なその声は、どうやらくしゃみらしい。
髪型も変というか独特で、綱吉は前に1度だけ食べた事のあるパイナップルを思い出した。
すごく似ている。
 
「僕の名前は六道骸で……クフッ!!…すよ……クハッ!!」
 
くしゃみが止まらないらしい。
 
すると、リボーンの後ろにちょこんと立っているフードを深く被った赤ん坊が目に入った。
 
「彼は…?」
 
すると代わりにオレガノが答えた。
 
「あぁ、彼はほとんど話さないのですよ。マーモンと言って、おとなしくていい子です」
 
みんないい人達みたいだ。
 
「これで全部ですか?」
 
「いえ……あ、いた、ちょっとっ」
 
彼女が呼んだのは、黒髪でお世辞にも目つきがいいとは言えない小人。
 
「ほら、挨拶は?」
 
「僕はそんな奴信じないよ。何さ、いきなり転がり込んできて。弱そうな草食動物は嫌いだよ」
 
そう言って部屋から出て行ってしまった。
オレガノが申し訳なさそうに謝る。
 
「ごめんなさい、ちょっと警戒心の強い子で…。雲雀恭弥という名前です」
 
「そうですか…」
 
まぁ、当然だろう。
 
 
 
それから、綱吉はここに住まわせてもらう事になった。
 
ただし条件がいくつか。
まず、家事の一切をやる事。
それからここの場所を誰かに教えない事。
この2つだ。
家事はいつも母親の手伝いをしていたからある程度は問題ないし、隠れている身なのでこの場所を誰かに教えるという事もない。
 
綱吉は大きく頷いた。
 
 
 
それから、小人達との奇妙な共同生活が始まったのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
―――――――――――――――――――――――――――
綱吉、7歳です。
忘れそうになる。
やっと小人達登場。
2008.03.17
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