小説1

□Neve Bianco
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「はあああぁぁぁ……」
 
廊下で長いため息を吐きながら歩く男。
彼の名はスペルビ・スクアーロ。
この城専門の猟師だ。
だが今はそれよりも雑用係と言った方があっている。
特にあのザンザスは我が侭で、かなりこき使われいていた。
 
その彼から呼び出しがあったのだ。
きっとろくな事じゃない。
 
 
 
 
「入るぜぇ…」
 
ノックをして入る。
が、いきなり花瓶が飛んできた。
それを避けきれずおでこをかすった。
 
どうやら、かなり機嫌が悪いらしい。
 
 
 
「う"お"お"お"い!!何だいきなりぃ?!」
 
「仕事だ、カス」
 
「仕事…?」
 
という事は、猟師としての仕事という事だ。
……珍しい。
 
 
 
「下町にいる沢田綱吉というガキを殺してこい」
 
 
「沢田…綱吉…?ソイツが何なんだぁ?」
 
「沢田家光のガキだ」
 
「沢田家光……」
 
 
聞いた事がある。
沢田家光。
9代目と同等の権力を持ち、このボンゴレを陰ながら支えてきた者。
実は初代ボンゴレ当主の血を受け継いでいる。
その子供という事はつまり……
 
 
「10代目候補かぁ」
 
「あぁ。危険な芽は早いうちに摘んでおいた方がいい」
 
「………了解だぁ」
 
 
そう言うと、スクアーロは部屋を出て行った。
 
 
 
 
 
まさか、狩るのが人…しかも子供だとはさすがに予想出来なかった。
今までになかったわけではない。
 
実はスクアーロは暗殺も手がけていた。
貴族ともなると、他の貴族らとただ仲の良いお付き合い、というわけにもいかないのだ。
裏切り者だって出てくるし、スパイだって潜り込んでくる。
9代目などを狙った暗殺者だって来る可能性もある。
そのための護衛のようなものだ。
 
 
 
 
「沢田綱吉かぁ…」
 
調べれば居場所はすぐにわかる。
 
ザンザスは我が侭だし俺様だし人使いは荒いしどうしようもない奴だが、誰よりも強い。
それは自分が1番よく知っている。
それにリーダー性もあると思う。
だから、ボンゴレのためにも彼が10代目になるのが最良なのだ。
 
その邪魔は、誰にもさせない…。
 
 
生まれながらにボンゴレに仕えてきたスクアーロは、誰よりボンゴレに忠誠を誓っている。
そして誰よりボンゴレを想っている。
 
 
 
準備は出来た。
武器は剣。
これだけで十分だ。
 
そもそも、たかが10歳にも満たない子供相手に武器もいらないかもしれない。
 
 
 
 
沢田家光とは、スクアーロも面識があった。
ひょうひょうとして明るい男だった。
 
だが数年前、突然ボンゴレから抜けた。
裏切ったわけではない。
ただ、ボンゴレとの一切の関係を拒んだのだ。
それは間違いなく、妻となった沢田奈々の存在が原因だった。
 
彼女はここの使用人だった。
だが2人の間には身分という壁があった。
いくらボンゴレの城に勤めているとはいえ、元は一般人。
特に貴族は身分というものに執着し、うるさい。
9代目は了承しようとしたが、周りがそれを許さなかった。
ボンゴレナンバー2とも言われる者が一般人と一緒になる事など、あってはならない事なのだ。
 
だから、彼は恋人を連れてボンゴレを抜けた。
何も告げずに、行き先も言わずに。
いわゆる駆け落ちというやつだ。
 
そいつは初代の血を受け継いでいるから、つまりはその子供にも初代の血が流れている。
10代目候補としては申し分のない者だ。
そう、9代目の養子でありボンゴレとは血の繋がりがないザンザスよりも…。
 
 
 
そもそも、スクアーロは家光の事があまり好きではなかった。
同じボンゴレを支える身でありながら、突然姿を消した男…。
それは彼にとっては裏切りと大差ないものだった。
 
 
 
 
 
「どんな奴なのか、楽しみだぜぇ」
 
 
計算からしても7歳かそこらだろう。
そいつは何も悪くないかもしれないが、仕方がない。
存在自体が罪なのだ。
 
 
 
 
愛用の剣を手入れすると、スクアーロはボンゴレの城を出て下町へと向かった。
 
 
その目は鋭く、まるで獲物を追う鮫のようだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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説明長くてすみませんι
次からはちゃんと進むと思います。
身分違いの恋っていい…。
2008.02.26
2008.02.27
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