小説1

□Neve Bianco
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丘の上に大きくそびえ立つ城。
そこにはボンゴレの名を持つ貴族が住んでいた。
ここら一帯で知らぬ者はいないという程有名な貴族だ。
 
その当主、9代目ことティモッテオ。
彼には息子が1人いる。
 
名をザンザス。
実は彼は9代目の本当の息子ではない。
それは周囲も承知である。
だが、次期10代目候補として期待されていた。
というのも、他に後継者がいないからである。
それに彼は何事においても成績優秀で頭もきれる。
幼い頃から10代目になるためにいろいろな特訓や教育を受けてきたため、血が繋がらないからといって文句を言う者はいなかった。
 
本人も、自分はいずれ10代目になってこの城を、ボンゴレの全てを受け継ぐのだと確信していた。
 
 
 
 
彼の部屋には、世界三大珍物のうちの1つである魔法の鏡があった。
この鏡はいろいろな能力を持っており、知りたい事を教えてくれる。
決して間違いは言わないが、気まぐれなのがたまに瑕だ。
 
 
 
17歳になった頃、ザンザスはふとその鏡を取り出した。
10歳の時にもらったはいいが、あまりにウザくて奥にしまっていたのだ。
 
やはりだいぶ埃をかぶっていたが、傷んではいなかった。
 
 
「おい鏡」
 
するとその鏡には自分ではなく、中にいる精霊のようなものが映った。
 
 
「んもう、あれだけ放っておいて何なのよっ。7年よ7年!!信じらんないわ。それに私にはちゃんと名前があるの。ルッスーリア、ちゃんと覚えてちょうだい」
 
台詞だけを聞けば我が侭な少女に聞こえなくもない。
だが、鏡に映っているのは筋肉質のゴツイ男。
髪型も変だし、そもそも何故サングラスなどを精霊もどきがかけているかがわからない。
彼の話し方や容姿も、ザンザスがこの鏡を放っておいた原因であった。
 
 
 
「暇だから使ってやる。テメェは何でも正確に答えられんだろ」
 
「そりゃあねぇ。でも、私は気まぐれだから質問されても答えるかはわからないわよ〜」
 
「…そうか」
 
そう呟くと、ザンザスは一旦部屋から出て行った。
 
それからすぐに戻ってくる。
 
 
……手にハンマーを持って。
 
 
 
「これで砕かれるか、俺の質問に正直に答えるか、どちらかを選べ」
 
「ちょっとぉ?!何よその2択っ」
 
「俺はどちらでもいいが?」
 
そう言ってザンザスはハンマーを振り上げる。
するとルッスーリアは青ざめて慌てて首を横に振った。
 
「イヤよイヤっ、そんなので叩かれたら粉々だわ!!……わかったわよ、答えるわ」
 
「よし」
 
ザンザスはハンマーを下ろすと、鏡の前に仁王立ちした。
 
 
 
 
「この世で、誰が1番ボンゴレ10代目に相応しいか言え」
 
 
 
 
「ん〜〜……下町に住んでいる沢田綱吉、彼ね」
 
 
 
「何…だと?!」
 
 
 
思わぬ回答にザンザスは目を丸くする。
 
 
 
「だから、沢田綱吉。今ちょうど7歳ね」
 
 
 
「おいテメェ、前は俺だって言ってたよな」
 
 
「だから、7年の間で状況が変わったのよ」
 
 
「……………」
 
 
沢田綱吉。
聞いた事がない。
 
だが、沢田という姓には聞き覚えがあった。
確かどこかの書物にあったはずだ。
 
 
もう一度鏡を見る。
 
……魔法の鏡は嘘をつかない。いや、つけないのだ。
嘘をついた瞬間、鏡が粉々に砕かれる。
だから信頼性が高く、高価なものなのだ。
 
 
 
 
 
「沢田綱吉……」
 
 
誰だか知らないが、10代目になるのはこの俺だ
 
 
それ以外はありえない
 
 
 
 
 
「ちょっと…?」
 
不安になり、ルッスーリアは恐る恐る声をかける。
 
 
「……用事が出来た」
 
ザンザスは一言そう言うと、足早に部屋を後にした。
 
 
 
 
「また放置?!あんまりじゃないのよぅ」
 
 
そう叫ぶが、悲しきかな、彼は鏡から出られないのだった。
 
 
 
 
 
 

 
 
――――――――――――――――――――
ザンザスは王妃じゃありませんね、確実に。
王…というか当主の養子。
ルッスは絶対この役だと思う(笑)
2008.02.24
2998.02.25
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