小説1
□兄弟
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そしてとうとう、ザンザスが家に来るという知らせが届いた。
正解には“帰ってくる”だろうか。
綱吉の焦りようは半端じゃなかった。
6年ぶりの再会。
それがなんと明日だというのだ。
焦らないわけがない。
当日の朝。
家を出ると、いつものように獄寺が笑顔で立っていた。
「おはようございます、10代目!!」
「お…おはよう、獄寺君」
何故10代目と呼ぶのか聞いてみたら、「10代目は10代目ですから!!」と元気よく言われた。
全く訳がわからない。
でも、中学生になって初めて出来た友達。
向こうは友達というより上司とか年上みたいな接し方をしてくるが、それも「尊敬してますから!!」で流された。
獄寺君は転校生で、イタリアと日本のハーフ。
勉強も運動も出来ておまけにすごくカッコイイ。
女子からは圧倒的な支持がある。
だが、それを相手にもしない。
まぁ、そんなところも素敵だとかいう女子も沢山いるのだが。
何故こんな彼が、自分なんかを慕ってくれているんだろう。
綱吉が終始疑問に思っている事だった。
学校に着くと、朝練を終えた山本がこれまた笑顔で挨拶してきた。
「よぅツナ、おはよーさん」
「山本、おはよう。朝練お疲れ様」
「テメェ山本、また10代目に馴れ馴れしく…」
獄寺君と山本の仲はあまりよくない。
というか獄寺君が一方的に山本につっかかっているだけのようにも見えるが。
山本は野球部のエース。
自分が言うのもなんだが、勉強はあんまり。
だがその分運動神経はかなりいい。
彼も結構女子に人気があるのに、相手にしない。
自分にばかり気を使ってくれる。
綱吉は、山本のこうした事にも疑問を抱いていた。
と、山本が綱吉の顔を覗き込む。
「ツナ?なんか顔色悪くねぇか?」
「本当ですか10代目?!右腕の俺が気がつかなければいけないのに、すみません!!」
相変わらずオーバーな獄寺君にも慣れた。
「大丈夫、ちょっと寝不足なだけだから」
そう、昨日はとても寝られたもんじゃなかった。
今だって少し憂鬱だ。
昼頃に来るそうだから、きっと帰ったらもういる。
最初にかける言葉も考えたが、何を言ったらいいのか思いつかない。
そんな事を考えていると、いつの間にか下校の時間になっていた。
こんな時ばかり、時がたつのは早い。
山本はすぐに部活。
綱吉はいつものように獄寺と帰ろうと下駄箱に向かう。
だが校庭が何やら騒がしい。
よく見てみると、校門の前に1台の真っ黒い車が停まっていた。
車に詳しくはないが、高級そうだった。
誰か金持ちいたっけ?と思いながら綱吉は靴を履き校門へ向かう。
出来るだけこーゆー非日常には関わりたくない。
そう思い、獄寺とそろそろと脇を通り過ぎようとした時、突然腕を掴まれた。
掴んだ先を見れば、まず真っ黒な服。
どっかの団服みたいだ。
そして鮮やかな羽飾り。
そして――…すごく見覚えのある顔だった。
「テメェ!!10代目に何を……」
獄寺が食ってかかろうとするが、もう1人の黒い服を着た男に押さえられてそれは叶わなかった。
「……………お兄…ちゃん…?」
「あぁ。久しぶりだな、綱吉」
その瞬間、獄寺含め周りの生徒達が目を見開く。
(お兄ちゃん?!…って、ダメツナの兄貴って事か?!)
(でも似てないよ?)
(てか高級車だよなコレ……)
そんな生徒達の囁き合いの中、獄寺はすでに軽くフリーズしていた。
(10代目にお兄様が?!いや、そんなの聞いた事ねぇし!!だが現にここに…しかし外人…てかイタリア人くさいし。もしかして10代目もハーフ?!)
などとかなり混乱している。
ここは本人に確認をとるしかない。
「じゅ、10代目、そいつ…いや、その方は10代目のお兄様で…?」
すると綱吉は困った顔をしてオロオロし出す。
その様子を見て、ザンザスはある事を察した。
「……母さんから聞いたのか」
「………うん」
綱吉は迷っていたのだ。
ザンザスを兄と言っていいのかどうか。
そんな義弟の肩を引き寄せて、ザンザスはこう言い放った。
「俺はコイツの兄じゃない」
「っ……………」
綱吉にとっては絶望的とも言える言葉だった。
そのまま固まってしまう。
“兄じゃない”、その言葉が頭の中をぐるぐると回っていた。
外野や獄寺はポカーンと口を開けたまま、車に乗せられる綱吉を見送ったのだった。
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先が読めてしまう…ι
獄寺と山本の説明が長くて…いらなかったかな。
綱吉から「お兄ちゃん」って呼ばれたら誰でも萌え悶えると思う。
2008.01.21