小説1

□葛藤
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「お嬢様ぁ!!」
 
 
「オ…オレガノさん…?」
 
 
いつも冷静で滅多に大声などあげないオレガノが、今は髪を振り乱して叫びながら走ってくる。
綱吉は目を丸くして、思わず廊下で立ち止まってしまった。
 
追いついたオレガノは、何処から走ってきたのか苦しそうに息を切らしていた。
 
「オレガノさん…大丈夫ですか?」
 
何か緊急事態だろうかと、綱吉は少し身構える。
 
 
「あのっ……お…お嬢様……」
 
まだ息が整っていないオレガノ。
 
彼女の方が年上なのに“様”付けで呼ばれているが、それは当たり前。
綱吉は次期ボンゴレ10代目候補。
彼女を呼び捨てに出来る者など、両親と9代目、それに守護者と家庭教師のリボーンくらいだろう。
だが、そんな風に呼ばれたり敬語を使われる事を綱吉は望んでいなかった。
第一慣れない。
だが、今から他の幹部達になめられないようにとのリボーンの考えだ。
 
特に門外顧問チームの間では、彼女の事を“お嬢様”と呼んでいた。
ちなみに門外顧問である彼女の父は“親方様”と呼ばれている。
いや、呼ばせているの間違いか。
 
 
 
「おおお嬢様!!」
 
「はいぃ?!」
 
息切れで膝に手を置いていたオレガノ。
顔を上げたと思ったら突然綱吉の両肩をガシッと掴んだ。
 
 
 
「結婚するって本当ですか??!!」
 
 
「え……はい。誰に聞いたんですか?昨日決まったばかりなのに…」
 
ふらぁっとよろめくオレガノ。
だがなんとか持ちこたえる。
 
「やっぱり……親方様が部屋で荒れているから覗いてみたら“可愛い娘が嫁に〜”とか嘆いていたもので……」
 
アハハと綱吉は苦笑する。
実はまだ父親の承諾は得ていない。
だが門外顧問の父より強い母が賛成しているから、まぁ大丈夫だろう。
 
 
ここで、オレガノは1番肝心な事を尋ねた。
 
 
「それで、相手は誰なんですか?!」
 
 
 
「……………ザンザスさん」
 
 
たっぷりためて、綱吉は照れ臭そうにそう呟いた。
 

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