小説1

□恋
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そして綱吉は、それをずっと見ていたザンザスの存在に気づく。
 
 
「あの、本当にありがとうございました」
 
 
「・・・帰るのか」
 
 
「はい。えと、お礼とか・・・私、荷物とか全部無くしちゃって・・・・・・って、あっ!!そういえばパスポートとお金・・・」
 
 
先程1人で帰れると言っておいて、今気づいた。
 
 
そんな綱吉を見て、ザンザスは懐から何かを取り出す。
 
不思議に思って近づくと、それはパスポートだった。
渡されて中を見ると、なんと自分の写真があった。
 
 
 
「これ・・・・・・」
 
「作らせた。それで帰れるだろ。金も後でやる」
 
 
「・・・・・・どうして・・・ここまでしてくれるんですか?」
 
 
「・・・・・・」
 
 
「お礼とかいっても、私の家、そんなに金持ちじゃないからあまり払えませんよ?」
 
 
「馬鹿にすんな。そんな事のためにやったんじゃねーよ」
 
 
「じゃあどうして」
 
 
 
「・・・礼は金じゃなくて別のもんで払ってもらいたい」
 
 
「別のもの・・・?」
 
 
ウチ、そんなに高価な物なんて持ってませんよ?と言う綱吉に、そうじゃないとザンザスは言う。
 
 
 
 
 
「また、会いたい」
 
 
 
 
 
「へ?」
 
 
 
 
 
「また会ってほしい。それが礼じゃ駄目か」
 
 
 
 
 
「・・・・・・」
 
 
 
 
 
 
すごく切なそうに言われた。
 
 
男の人のこんな顔、初めて見た。
 
 
でも自分も、また彼に会いたい、そう思った。
 
 
 
 
「それだけで、いいんですか?」
 
 
「十分だ」
 
 
了承を得られたらしい綱吉の台詞に、ザンザスは少し微笑んでそう言った。
 
 
 
 
 
 
実は少し前、ある事に感づいたルッスーリアがザンザスの元を訪れていた。
 
 
「ボス、ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかしら?」
 
「何だ」
 
「綱ちゃんの事、好き?」
 
「ぶっ・・・」
 
 
思わず飲んでいるコーヒーを吐き出す。
 
それが答えだった。
 
 
「やっぱり。様子を見に行っても会ってないみたいだし、綱ちゃんにはすごく優しいらしいし?」
 
 
「・・・・・・」
 
 
「でも、早くしないと、綱ちゃん家に帰っちゃうわよ?いつまでもここにいさせる事は出来ないんだから」
 
 
「・・・わかってる」
 
 
「ならいいけど。ボスは奥手みたいだから私心配だわ〜。綱ちゃんとってもいい子だもの、きっとボスとお似合いよ」
 
 
「・・・・・・」
 
 
「とにかく、先手必勝よ。後数日しかないんだから」
 
 
「・・・あぁ」
 
 
 
だが、どうしていいかわからず、結局電話をかけさせる事までさせてしまった。
 
そして最後の手段とばかりに、礼だと言って会う事を半ば強要させた。
 
 
 
 
 
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